こんな口裂け女見たことない! ツヨカワ”コワイ”都市伝説ヒロイン爆誕『先生!口裂け女です!』ナカモトユウ監督インタビュー

 悲劇と復讐のヒロインは、伝説の最強魔女だったーー。

 1979年に社会問題にまで発展した都市伝説・口裂け女。日本中を恐怖に陥れたあの伝説が、”完全無敵の青春・バトル・ホラー・エンタテイメント”としてまったく新しい姿でスクリーンに蘇る!

 ヤンキー高校生3人組が盗んだバイクの持ち主は、あの口裂け女……⁉︎ 『ジョン・ウィック』『Mr.ノーバディ』『ドント・ブリーズ』に続く、ナメてた相手がヤバい奴だった系エンタテイメント『先生!口裂け女です!』が7月7日(金)より全国公開される。

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©️2023REMOW

 本作では、現在大ブレーク中の木戸大聖が映画初主演にして、ちょっと気の弱い心優しきヤンキー・タケシを熱演。抜群のバイク・ライディング・テクニックを持つアヤカは『仮面ライダーエグゼイド』の黒崎レイナ、バイク盗みの天才・F1を五島列島出身の注目の若手俳優・上野凱が演じている。

 さらに、口裂け女を”無敵の格闘ホラーヒロイン”として描いた斬新なアクションシーンを『キングダム』の川本耕史が手掛けるなど、日本が誇るトップ・クリエイターが参加していることでも話題に。

 今回、TOCANAでは映画の公開に先駆けて、監督、脚本、編集を務めたジャパニーズ・エンタテインメントの新鋭・ナカモトユウ監督にインタビューを行った。

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ナカモトユウ監督(撮影:編集部)

”口裂け女”には、今だからこそ描くべき理由がある

――映画を拝見させていただいたのですが、全体的に効果音がとても印象的でした。意図的なこだわりがあってのことだと思いますが、まずはそのあたりについてお伺いさせてください。

ナカモトユウ(以下、ナカモト):どっちかと言うとフィクション寄りの作品なので、わざとアニメっぽい音を使ってみたり、 効果音はやりすぎぐらいの感じで入れるようにしました。それこそ脚本を書く段階から、決めていた音もあったぐらいなので。

――当初から「全体的にポップなテイストに仕上げよう」といった狙いがあったわけですね。なぜ今回、都市伝説を題材にした映画を撮ろうと思われたのですか。

ナカモト:シンプルに都市伝説が好きなんです。TOCANAとか『ムー』も読んでましたし、いつか都市伝説をテーマにした映画を撮りたいという思いがあったので。

――数ある都市伝説の中から“口裂け女”を選んだ決め手は何だったんですか。ナカモト監督の年代的にも口裂け女ってちょっと古い話ですよね?

ナカモト:たしかに世代ではないんですけど、80年代の映画がすごく好きなので、懐かしさを感じさせる要素を入れたかったんです。あと、口裂け女には今だからこそ、描くべき理由があるというか。

 可愛らしい感じの口裂け女が登場する漫画って結構あるんですけど、映画ではそういう描かれ方をしている作品ってほとんど見たことがなかったんです。「口が裂けてるというだけで、怪物扱いするのはどうなんだ?」 と疑問を感じて、今回は口裂け女に遭遇した人ではなく、口裂け女自身を被害者として描いてみたいと思いました。

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(撮影:編集部)

――なるほど。口裂け女にチャーミングな印象を受けたのですが、背景にはそういう思いがあったんですね。ちなみに、他に好きな都市伝説上のキャラクターっていますか?

ナカモト:パッと出てくるのは、“てけてけ”とか“クネクネ”とか。あと、都市伝説ではないんですけど、僕、稲川淳二さんが大好きなんですよ。「赤いはんてん着せましょか〜」って老婆の声が聞こえてくる『赤い半纏』という有名な怪談があって、それも本当に好きですね。誰が気づくんだって話なんですけど、実はこの映画のプレスリリースにも、監督からのメッセージとして稲川淳二さん風のコメントを掲載してもらっています(笑)。

 ただ、他の都市伝説のキャラクターが闘うのってあまり想像できないじゃないですか? 口裂け女は人型なので、アクションにも向いているんじゃないかなと思ったんですよね。

作中に登場したバイクは自腹購入⁉︎ ナカモト監督のこだわり

――本作には、アクション監督として川本耕史さんも参加されていますが、構想段階からアクションシーンに力を入れたものを撮りたいという思いがあったのでしょうか。

ナカモト:そうですね。アクション監督は、当初からちゃんとした方にお願いしようと思っていました。 一方で予算の問題もあるので、大御所みたいな方にはお願いできないかなと思っていて、最初は知人のアクション監督にお願いするつもりだったんです。

 何人か候補がいたんですけど、この映画の制作時期がとある大作映画の制作に被ってしまっていて。そうなると、日本中のアクションマンが出払ってしまうので、全員都合がつかないということで断られてしまったんです。

 その映画を撮っている監督に直接相談したら、「じゃあ川本君が空いてるはずだから紹介するよ」って。川本さんは最近は海外の作品が多かったのですが、ちょうど撮影が終わって日本に帰国しているタイミングだったらしく、 紹介していただけることになったんです。

 だから、この規模じゃ声を掛けることができないようなアクション監督やアクションマンの方に協力していただけたっていうのは大きいですね。

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(撮影:編集部)

――一方で作中にはバイクもかなり登場しますよね? 都市伝説というテーマ然りバイクがたくさん出てきたりと、全体的にレトロポップな印象を受けました。

ナカモト:そこは意識しましたね。登場人物たちの衣装も、最近のイケてるファッションっていうよりも、ちょっと平成初期っぽいような感じの服装にしたくて、最初にスタイリストの方に相談しました。

 バイクもそうですね。僕、今日もバイクで来たぐらいバイクが好きなんですけど、ヤンキーって、ちょっとやんちゃなスクーターに乗ってるイメージがありませんか? でも、もう少し可愛いほうがいいだろうなと思って、敢えて主人公はホンダの“ゴリラ”っていう原付に乗ってる設定にしてみたりとか。

 どうしてもこの映画にゴリラを登場させたくて、これ僕、自腹で購入したんですよ(笑)。

――ええ! そんな撮影秘話が(笑)。レトロポップを意識したとのことですが、それは特定の客層を狙ってなど何か目的があったのでしょうか?

ナカモト:僕はもう30代なんですけど、やっぱり同年代の人にも刺さるようにっていうのは考えましたね。ブームって20年周期で変わっていくってよく言われると思うんですけど、30代の人にウケるような小ネタを入れたり。あと、僕の好きな昔の映画をリアルタイムで見ていたような、少し年上の方にも楽しんでもらえるような作品にしたかったので。

 あとは本当、若い人にもね。たとえば主演の木戸大聖君とか、役者の黒崎さんとか上野くんとか。彼らのファンの方にも見ていただきたかったので、低予算のホラー映画でどれぐらい反響あるのか、正直未知数ですが、そういう子たちにも面白いと思ってもらえるものを描けていたらいいなと思います。

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影響を受けた映画は『ターミネーター2』 登場人物の魅力に注目!

――昔の映画がお好きということですが、特に影響を受けた作品についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

ナカモト:普通に好きな作品でも大丈夫ですか? 僕が今までの人生で、いちばんよく見た映画は『ターミネーター2』です。子供の頃はVHSを何度も繰り返し見て、一時期は吹き替え版のセリフを全部覚えちゃってたぐらい。

 なので、今回の作品でも、口裂け女がバイクを追いかけるシーンは『ターミネーター2』のT-1000がジョン・コナーを追いかけるイメージなんです。役者の方やスタッフにも「このシーンは『ターミネーター2』っぽくお願いします」と伝えてました。

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――意外なところからあの印象的なシーンが生まれていたんですね。他に思い入れのある場面はありますか?

ナカモト:アクションシーンはこだわりましたけど、そこはアクション監督の川本さんが撮ってくださったので。僕はジャッキー・チェンが大好きなので、アクションシーンにも笑えるようなくだらないギャグを入れたくて、そういうのを考えるようにしてました。

――ホラー映画なのにクスッと笑えたり、怖いのが苦手な方でも楽しめる作品に仕上がっていますよね。

ナカモト:そうですね。そこに対して、僕はすごく言いたいというか、伝えたい思いがあるんです。僕自身、ホラー映画が好きなので、スプラッターとかR-18の作品をよく見るんですよ。ちょっと変なこと言うんですけど、海外の作品なら公開初日に見に行くぐらいなのに、日本のグロテスクなホラー映画となると、なかなか足が伸びないんですよね。

 ――え、それはなぜですか?

ナカモト:やっぱり予算がないんでなかなかね。難しいとは思うんですけど、作品のクオリティ的に……。 

 予算なんて気にせず、過激な映画を撮ってみたい! という思いはもちろんありましたけど、自分が見に行かないのにそれはちょっと違うんじゃないかと考えて、今回は誰が見ても楽しめるような、あまり暗くなりすぎない構成を意識しました。

 怖い描写もあるのでホラー映画ではあるし、アクション要素もあるんですけど、個人的にはヤンキー3人組の可愛らしいキャラクターに注目してほしいです。もともと登場人物の魅力が全面に出た作品を撮ってみたかったっていうのもあるので。

 実際、本作もPG-12にはなっていますけど、未成年が犯罪行為に関わるシーンがあるからという理由で年齢制限が設けられた感じなんですよ。

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(撮影:編集部)

作品を通して伝えたいメッセージは「本当に怖いのは人間」

――とはいえ、ホラー要素があるとなると、苦手な人には少しハードルが高いかもしれません。そういう方に向けて、ホラー映画の楽しみかたを教えていただけないでしょうか。

ナカモト:たとえば、Jホラーを代表する『リング』とかはやっぱり怖いじゃないですか。一方で、洋画のホラーってそんなに怖い作品はないんですよ。多少流血シーンがあったりしますけど、ジャンル的にもサスペンスとかアクションに近いようなものが多くて。

 でっかい音でビビらせるような演出はあるけど、たとえば殺人鬼が追いかけてくるだけの物語ってそんなに怖いものでもないので。 今回の映画みたいなホラーコメディから入っていって、徐々に慣れていくというのもアリだと思います。

――ナカモト監督といえば、過去に『悪魔のいけにえ』や『死霊のはらわた』をモデルにした作品を撮られていますが、今回の作品も海外ホラーの影響を受けているのでしょうか?

ナカモト:”ホラーコメディ”っていうジャンル自体、日本にはあまり浸透していないんですけど、海外ではよくあるカテゴリーなんですよね。そういう作品に影響を受けてきたので、海外ホラーの要素は取り入れつつ、今回の”ヤンキーVS口裂け女”って日本ならではテーマなので、テロップの出し方やエンドロールといった細かい編集方法は、80年代後半〜90年代の邦画作品を参考にしました。

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――登場人物の悪意の描き方も繊細で、ゾッとするものがあるなぁというのを感じました。編集方法以外にも、そういった細かい部分にも相当気を配られたんじゃないかなと。

ナカモト:そうですね。都市伝説が怖いというのは当たり前なんですけど、「本当に怖いのは人間だよ」っていうのが本作のメッセージでもあるので、人怖的な部分は外せなくて。ただ、あまり大袈裟にしても作品のバランスが崩れちゃうので、誰もが共感できる「この空気感やだな」とか「こういう人嫌いだな」っていうのを描くことで伝わればいいかなというのは、実は計算して脚本を書きました。

予測不能! 次々と巻き起こる展開に釘付けになること必至

――最後に、ナカモト監督からトカナ読者へ、本作の見どころ紹介をお願いします。

ナカモト:これがね、難しいんですよね。高校生のヤンキー3人組がいまして、彼らがある日盗んだバイクの持ち主は口裂け女だった。口裂け女に追いかけ回されて、映画が始まってたった16分で、主人公たちはヤバい! もう絶対絶命! っていう状況に追い込まれちゃうんです。

 そこからまだまだ展開があるんですけど、はたして3人は一体どうなるのか? どこに着地するんだろう? っていうのをハラハラしながら楽しんでもらえたらと思います。

 ジャンルミックスを意識したので、僕としては、一本の作品の中でカテゴリーがコロコロ変わっていくなか、振り回されながらガンガン進む展開を楽しんでいただけたら嬉しいです。なので、できるだけ前情報を入れずに見てほしいですね。

――ありがとうございます! 今回、いろいろと質問させていただいたのですが『ターミネーター2』がいちばんお好きって意外でした。

ナカモト:こういうときにマニアックな映画のタイトルとか言えたらいいんでしょうけど、本当好きなのがそういう映画なので。やっぱり僕はエンタメ映画が好きなんです。

――今回の作品もだいぶポップな作風ですよね。

ナカモト:もともとエンタメジャンル映画が好きだったので、自主映画を撮っていた頃からずっとこういう作品を撮ってきました。自主映画の映画祭って、真面目な人間ドラマを主題にした作品が多いんですけど、僕はカンフーとか改造人間とか、そういうのばかりテーマにしてきたので(笑)。今作が初の長編の劇場公開作品でもあるので、今まで培ってきた技術や経験をすべて活かしたものを作ってみたかったんです。

――エンタテイメントとして振り切るというのが、ナカモト監督のスタイルということですね。

ナカモト:僕はそうですね。好きな映画はたくさんあるけど、自分が撮るなら、ちょっとカラッとしたポップで楽しい娯楽作品を撮りたいです。これからも、そういった作品を皆様にお届けできるように頑張ろうと思っています!

こんな口裂け女見たことない! ツヨカワコワイ都市伝説ヒロイン爆誕『先生!口裂け女です!』ナカモトユウ監督インタビューの画像9先生!口裂け女です! 
2023年7月7日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテ 他 全国ロードショー
監督・脚本・編集:ナカモトユウ
出演:木戸大聖/黒崎レイナ/上野凱/里々佳/和田雅成/六平直政/大迫茂生/屋敷紘子 他
制作プロダクション:シャイカー/製作:REMOW/配給:エクストリーム
2023年/日本/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/DCP/PG12/84分 ©️2023REMOW 



■ナカモトユウ
『一文字拳 序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い』(18)でぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2018観客賞、カナザワ映画祭2018期待の新人監督グランプリを受賞して注目され、オムニバス作品『DIVOC-12』(21)の1エピソード「死霊軍団 怒りのDIY」など、ジャパニーズ・エンタテインメントの新鋭として精力的に活動している。

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文=浅香麻亜弥(トカナ編集部)

1993年生まれ、東洋大学インド哲学科卒。不思議なこととお酒と猫が好き。アンダーグラウンド・カルチャーにまみれながら、日々修行中。 TOCANA|UFO、心霊、予言など未知の世界の情報を発信、好奇心と知的欲求を刺激するメディア
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