捨てても戻ってくる呪いのアメジスト「デリー・サファイア」とは? インドの寺院から略奪された宝石に宿るインドラ神の呪いと恐怖

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画像:“Cursed Amethyst. Apparently.” by Sarah-Rose, licensed under CC BY-ND 2.0

 ロンドン自然史博物館の「ザ・ヴォールト(The Vault)」と呼ばれる宝石ギャラリーの片隅に、銀のリングに収められた小ぶりな紫色の石がひっそりと展示されている。両端にはスカラベ(フンコロガシ)のビーズがあしらわれた、一見すると美しいアンティークジュエリーだ。

 しかし、この石には絶対に触れてはならない。

 これは「呪われたアメジスト(デリー・サファイア)」と呼ばれ、所有者に次々と不幸、悲劇、そして死をもたらすとされる、イギリスで最も悪名高いオカルト・アイテムなのだ。

盗まれた宝石と「血に染まった」呪いの連鎖

 このアメジストの不気味な来歴は、かつての所有者であった博学者エドワード・ヘロン=アレンが残した1通の警告の手紙によって語り継がれている。

 彼は手紙の中で、この石を「三重に呪われ、血に染まっている」と呼び、次に手に入れた者は「直ちに海に投げ捨てるべきだ」と警告している。

 手紙によれば、事の発端は19世紀のインド大反乱(セポイの乱)にまで遡る。

 この石は、反乱の最中にカーンプルにあるインドラ神の寺院から略奪され、W・フェリス大佐というイギリスの騎兵によってイギリス本国へと持ち込まれた。

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インド大反乱 Granger – [1]http://www.granger.com/results.asp?image=0004429&itemw=4&itemf=0002&itemstep=1&itemx=5, パブリック・ドメイン, リンクによる

 呪いはすぐに牙を剥いた。フェリス大佐は次々と災難に見舞われ、財産をすべて失って破産。彼から石を受け継いだ息子も同じ運命をたどり、見かねて友人に石を譲ったところ、その友人は突如として自殺してしまった。しかも、遺言によって石は再びフェリスの息子へと戻されてしまったのだ。

 1890年、エドワード・ヘロン=アレンがこの石を買い取ったが、彼の人生もすぐにパニック状態に陥った。彼がこの石をある歌手の友人にプレゼントしたところ、彼女は「突然声が出なくなり、二度と歌えなくなった」という。

7つの箱に封印し「私の死後33年間は開けるな」

 恐怖に耐えきれなくなったヘロン=アレンは、この石を運河へ投げ捨てた。しかし、どういうわけか浚渫船(川底をさらう船)によって石は発見され、再び彼の手元へと戻ってきてしまったのだ。ホラー映画の呪いの人形そのものである。

 ついに彼は、この石を「7重の箱」に入れて厳重に封印し、銀行の金庫に預けた。そして「私が死んでから33年間は、絶対に光を当ててはならない」という厳命を残した。

 しかし、彼の娘は父親の死後わずか1年足らずの1944年にあっさりと箱を開け、この厄介な代物をロンドン自然史博物館へと寄贈(押し付け)してしまったのである。

呪いは本物か、それとも「壮大なステマ」か?

 この背筋が凍るような呪いのストーリーだが、歴史家たちの間では「エドワード・ヘロン=アレンが仕組んだ壮大な作り話(プロモーション)ではないか」という冷ややかな見方も存在している。

 実は彼は1921年にクリストファー・ブレアというペンネームで『The Purple Sapphire(紫のサファイア)』という小説を出版しており、その内容は「大佐が持ち帰った呪いの石」という、手紙のストーリーと丸被りのものだったのだ。彼が死後に自分の小説を宣伝するために、わざわざ銀行の金庫に「作り話の手紙」と一緒に石を保管していた可能性は高い。

 しかし、人間は「奪われた財宝には呪いが宿る」というダークなロマンに抗えない生き物だ。植民地から略奪された宝石という背景が、この石に「人間の強欲への罰」というシンボルを与え、オカルトファンを惹きつけてやまないのだ。

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イメージ画像 Created with AI image generation

21世紀になっても続く「紫の呪い」

「結局、小説のステマだったのか」と安心してはいけない。このアメジストの呪いは、21世紀のロンドンでも未だに健在のようなのだ。

 自然史博物館の元学芸員であるジョン・ウィテカー氏は、2004年にこの石をイベント会場へ運搬する任務を任された際、恐ろしい体験をしたと語っている。

 石を車に乗せた途端、彼と妻は凄まじい雷雨に見舞われ、車内に閉じ込められて「人生で最も恐ろしい思い」をしたという。

 さらに、彼が次にこの石を運ぼうとした前夜には原因不明の激しい胃腸炎でダウン。3回目に運ぼうとした時は、強烈な痛みを伴う「腎臓結石」で倒れてしまったのだという。

 作り話から始まった呪いが、人々の恐怖を吸い込んで「本物の呪い」へと昇華してしまったのか。それとも、インドラ神の怒りは今も紫の石の中で静かに燃え続けているのか。

 ロンドン自然史博物館を訪れる機会があっても、決してこの紫の石を長く見つめてはいけない。もしあなたの体に「石」ができても、誰も責任は取ってくれないのだから。

参考:MENTAL FLOSS、ほか

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