ニューメキシコ州で3機のUFOが墜落、FBI文書が存在… 謎に包まれた「アズテック事件」を解説(2)

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画像は「Getty Images」より

――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀り。アーノルド事件からCBA事件までを振り返る。

第1回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(1) 
第2回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(2)
第3回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(1)
第4回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(2)
第5回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(1)
第6回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(2)
第7回:戦前に設計された円盤形航空機「ディスコプター」とは?
第8回:UFO=宇宙人の乗り物説は日本発祥だった!?
第9回:UFO研究の先駆者ドナルド・キーホー概説
第10回:1897年「オーロラ事件」は世界初のUFO墜落事件なのか?
第11回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(1)

 前回の記事では墜落した1機目のUFOについて解説した。

 2機目のUFOはアリゾナ州の兵器試験場近くに着陸した。今回は最初からドアが開いており、機内にはやはり16人の死体があったが、焼け焦げてはいなかった。そこで、飛行中何らかの原因でドアが開き、地球の大気が流れ込んだために死亡したものと推定された。

 今回のUFOは最初のものより少し小型で、直径22mほどだが、構造は最初のものとよく似ており、トイレ関連の設備も確認できたという。

 3機目は、直径11mほどの小型UFOで、ネバダ州のフェニックスに着陸した。乗員は2人で、1人はハッチのような開口部から半ば身を乗り出すようにして死んでおり、もう1人の死体は計器盤の前の椅子に座ったままだった。

 ちなみにスカリーによれば、ギー博士は磁気地理学の泰斗で、第二次世界大戦中は磁気捜査機関研究所の指導者として潜水艦探知機を発明し、日本の潜水艦の脅威からアメリカの艦船を救ったという。1948年の時点でも、まだ当局と関係を持っていたらしい。

 しかしUFO本体は研究所に運ばれたため、ギー博士が証拠として提示できるものは真空管のない無線機一台、何枚かの歯車や円盤など、ポケットに入れて持ち運べる小物だけだった。

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右:フランク・スカリー(画像は「Getty Images」より)

 スカリーの本がベストセラーになると、自らの手で事件の真相を探ろうとする者たちも現れた。『バラエティ』のライバル雑誌『トゥルー』の専属ライターであるジョン・フィリップ・カーンもその1人であった。

 カーンはまずスカリーを訪ね、スカリーの仲介により、あるホテルのレストランでニュートンと会見することになった。

 この席でニュートンは、無造作にハンカチに包んだ4個の金属片をカーンに見せた。2個は小さな歯車で、他の2個はさらに小さな、5セント硬貨くらいの丸くて薄いものだった。

 カーンはニュートンに対し、ちゃんとした研究施設で金属片を調査するよう勧めたが、ニュートンは断った。そこでカーンは非常手段に訴えることにした。手品の手法を用いて、ニュートンの金属片を1個かすめ取ることにしたのだ。

 次にニュートンに会ったとき、カーンは金属片の1個をつまみ上げ、返却するときに掌に隠した偽物とすり替えた。カーンの用意した偽物はできの良いものではなく、サイズが微妙に異なっていたのだが、ニュートンはまったく疑うことなくそれを受け取り、他の3個と一緒にハンカチに包んで持ち帰った。

 カーンはすぐに、詐取した金属片をスタンフォード研究所に送って成分の分析を依頼したところ、結果は普通のアルミニウムであった。

 同時にカーンは、スカリーのいうギー博士が、アリゾナ州フェニックスに住む機械工レオ・ゲバウアーだということもつきとめた。

 この顛末は、『トゥルー』誌1952年9月号に掲載された。しかもその後、ニュートンとゲバウアーが詐欺で有罪になってしまったこともあり、スカリーとその著書の信用も地に落ちてしまった。もちろん、UFOを探知したというテネスコープなるものも存在しない。こうして現在では、アズテック事件もオーロラ事件同様ホラ話ということになってしまった。

 他方、スカリーは真実に近づきすぎたためCIAの罠にはめられたのだという主張も一部にはあった。さらに1974年になって、アメリカのロバート・スペンサー・カー(1909~1994)は事件の目撃者5人を新たに発掘したと述べている。また1977年には、アメリカのUFO研究家ブルース・マカビーが、情報公開制度を利用して手に入れた文書の中に、シカゴのFBI特別捜査官ガイ・ホッテルが残した1950年3月22日付の報告書、通称ホッテル・メモも発見された。このホッテル・メモには、ある情報提供者が空軍の調査官に対し、ニューメキシコ州で3機のUFOが回収されたと述べたことが記されている。

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ホッテル・メモ(画像は「FBI」より)

 FBIは文書の真正を認めてはいるが、内容については伝聞であり調査されていないとしている。

 もしかしたら、墜落事件そのものは本当に起こったことかもしれない。他方カーティス・ピーブルズの『人類はなぜUFOと遭遇するのか』によれば、1948年の墜落事件というものはそもそも、ジョージ・バウラという『アズテック・インディペンデント・レビュー』紙記者が、冗談半分に書いた記事が発端とされ、それが翌年には多くの地方紙に転載されたというから、この話が各方面に伝わって同じような話が伝わっている可能性もあるだろう。

 なお、1993年に作られたアメリカのテレビ・シリーズ「Xファイル」ではダナ・スカリーという女性の捜査官が活躍するが、「スカリー」という苗字はフランク・スカリーにちなんだものだという。

文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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