日本各地に残る伝説の龍「九頭竜」箱根では人身御供も…神話から現代の信仰まで

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 2024年の今年は辰年。干支は十二支の中でも唯一の架空の生物である龍だ。龍の伝説は各地に残っているが、変わった姿の龍の伝説も存在している。中でも特徴的な姿をしており、各地で強力な龍と言い伝えられている存在が九頭竜だ。

 九頭竜は文字通り頭、もとい首が9本ある龍だ。有名なところでは石川県、福井県を流れる九頭竜川の名前にもなっている九頭竜だろう。

 九頭竜川の由来は様々なものがあるが、白山信仰と結び付いた伝説が存在している。一つは9世紀後半、平泉寺の白山権現が衆徒の前に現れ、その尊像を川に浮かべたところ、九つの頭を持つ龍が姿を現した。龍は尊像を捧げながら流れを下り、今の黒竜大明神社がある対岸に着いた。以来、この川を九頭竜川と呼ぶようになったとされている。

 もう一つは前述した黒龍大明神社に関するもので、10世紀半ばに国土を護るために国の四隅に四神が置かれることとなった。越前の崩山が北の隅に該当し、その地に黒竜大明神社が置かれたことから、神社の前を流れる川を「黒竜川」と呼ぶようになった。この呼び名が時を経て変化し、九頭竜川と呼ばれるようになったという説も存在している。だが、最も有力なのはこの川が氾濫の多い荒れた川だったから、という説だ。九頭竜川は急峻な地形の間を流れている上に、上流では多く雨が降ったり雪も多い地域であったことから、昔から氾濫を繰り返すことが多く「崩れ川」と呼ばれていたという。この呼び名が変わって九頭竜川になったと言われているのだ。

 九頭竜の伝説が存在する地域は多数あるが、もう一つ有名なものが箱根の九頭龍神社に伝わる伝承だろう。

 九頭龍神社(本宮、ほんぐう)の縁起は、箱根神社(箱根権現)と同じ天平宝字元年(757年)、箱根神社を開いた万巻上人が、芦ノ湖で龍が暴れていると聞きつけ調伏に向かった。当時、湖には毒と九つの頭を持つ悪龍が住んでおり、人々に悪さをしていた。そのため箱根の村の人々は、毎年若い娘を人身御供に捧げていた。

 この状況を憂いたのが箱根山で修行をしていた万巻上人だった。万巻上人は湖畔で経文を唱えて毒龍に対して人身御供を止めるように説得。長い説得に毒龍は湖から姿を現し、宝珠・錫杖・水瓶を差し出して過去の行いを詫びた。しかし万巻上人は龍を許さず、鉄鎖の法で龍を湖底の「逆さ杉」に縛り付け、更に仏法を説き続けた。龍はついにもう悪事をしないこと、これから地域一帯の守り神になると約束し、万巻上人も龍の決意が堅いことを知って九頭龍大明神としてこの地に奉ることにしたという。

 ちなみに、この日が旧暦の6月14日であったことから、九頭龍神社(本宮)では毎年6月13日に例大祭が行われる。また、7月31日の湖水祭では生け贄に見立てた赤飯を九頭竜に捧げる行事がある。赤飯の入ったおひつを御供船に載せ、逆さ杉のところで湖底に沈める。このお櫃が浮かび上がってくると、龍神が供物を受け入れなかった証だとされ、災いが起きると言われているそうだ。

参考URL:九頭竜湖 | 山岳紀行 | ようこそ昇龍道

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文=加藤史紀(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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