“頭の大きな”古代人類の新種発見! ホモ・ジュルエンシス(Homo juluensis)とは何者か?

Peter DargatzによるPixabayからの画像

 近年、研究者たちはホモ属の新種を発見し、ホモ・ジュルエンシス(Homo juluensis)と命名した。この「大きな頭」を持つ人類について、一体何が明らかになっているのだろうか。

中国で発見された大きな頭蓋骨

 中国で発見された非常に大きな頭蓋骨に基づき、研究者たちは古代人類の新種を特定し、ホモ・ジュルエンシスと命名した。「ジュルエンシス」とは「大きな頭」を意味する。この新種は、約30万年前から5万年前の中期更新世における人類の多様性を理解する上で、古人類学者にどのような手がかりを与えてくれるのだろうか。

 我々の祖先であるホモ・サピエンスは約30万年前に進化し、アフリカからヨーロッパやアジアへと急速に拡散した。古人類学者は何十年もの間、現生人類の到来以前、特に70万年前から30万年前の間に、複数種の初期人類が存在していた時期における人類の進化過程の解明に取り組んできた。

 例えば、西ヨーロッパではホモ・ハイデルベルゲンシス、中国中部ではホモ・ロンギの化石が発見されているが、これらがそれぞれ独立した種であるかについては、研究者の間で意見が一致していない。これらの化石は「古代型ホモ・サピエンス」や「中期更新世ホモ」といった包括的な用語で分類されることもあり、非公式には「中期更新世の混沌」とも呼ばれている。

 2023年にThe Innovation誌に掲載された中国の化石人類に関する論文の中で、ハワイ大学マノア校の人類学者クリストファー・ベイ氏、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所の古人類学者呉秀傑氏らは、これらの包括的な用語を使い続けることで、我々の祖先の間の進化関係を完全に理解することが妨げられてきたと述べている。

新種のホモ・ジュルエンシスと他種との関係

 呉氏とベイ氏は、中国の許家窰(Xujiayao)と許昌(Xuchang)という2つの遺跡から出土した10万年前から22万年前の化石に基づき、ホモ・ジュルエンシス(Juluren:大きな頭の人々)という新種の人類を提唱した。これらの化石は、1974年の許家窰における1万点以上の石器と21個の人骨片の発見、そしてXuchangでの4つの頭蓋骨発見を含む、数十年にわたる調査の成果である。

 ホモ・ジュルエンシスの特徴は、その大きな脳と厚い頭蓋骨に表れている。興味深いのは、その形態がネアンデルタール人に似た特徴を示す一方で、現生人類やデニソワ人に共通する特徴も併せ持っている点だ。このことから、彼らはホモ・ジュルエンシスが中期更新世の東アジアに広く分布し、ネアンデルタール人を含む様々な人類集団との交配を経て進化した可能性を示唆している。つまり、東アジアにおける人類の進化は、単純な系統ではなく、様々な系統の交雑による複雑な過程であった可能性が高いのだ。

中央アジアの人類遺跡とそこで発見された化石を示す画像 画像は「Live Science」より

 しかし、ホモ・ジュルエンシスはすべての専門家に受け入れられているわけではない。例えば、ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンガー氏は、これらの化石はホモ・ロンギに分類されるべきだと考えている。また、「大きな頭」という特徴だけで新種とするには証拠が不十分だという意見もある。

 それでも、この新種の提唱には重要な意味がある。ウィスコンシン大学マディソン校のジョン・ホークス氏が指摘するように、名称を与えることで、研究者間で特定の化石群についてより明確に議論できるようになる。ベイ氏も、新種の命名は、特に複雑なアジアにおける人類進化の理解を深め、研究者間のコミュニケーションを円滑にする上で重要だと考えている。ホモ・ジュルエンシスが正式な種として認められるかどうかは今後の研究次第だが、この議論自体が人類進化の複雑さを浮き彫りにし、更なる研究を促進する力となるだろう。

 古代人類の進化の過程は、複雑で謎に満ちている。今回のホモ・ジュルエンシスの発見は、その謎を解き明かす新たなピースとなるかもしれない。今後の研究で、この新種に関する更なる情報が明らかになることを期待したい。

参考:Live Science、ほか

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文=深森慎太郎

人体の神秘や宇宙の謎が好きなライター。未知の領域に踏み込むことで、日常の枠を超えた視点を提供することを目指す。

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