【不死身の怪僧ラスプーチン】毒殺失敗!銃撃も無効!? 100年の時を経て暴かれる「暗殺劇」の杜撰な真相とは

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画像は「Wikipedia」より

 ロシア正教の僧侶にしてヒーラーであり、時の皇帝に重用されたラスプーチンの暗殺の謎とは――。

■ラスプーチン暗殺事件のあらまし

 1916年12月、凍てつくネヴァ川の氷の直下に浮かんだグリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチンの遺体が発見された。

 遺体の片目は陥没し、3つの銃創と無数の切り傷と痣を負っていた。ロシアで最も悪名高い男の1人、ラスプーチンは47歳で暗殺されこの世を去った。

 暗殺から100年以上経った今もなおラスプーチンの伝説は語り継がれているが、実は評価するのが難しい人物でもある。

 20世紀初頭、ロシアはヨーロッパ最後の絶対君主制国家であり、ロマノフ王朝の皇帝ニコライ2世は不人気な統治者であった。革命への恐怖と腐敗に陥っていたロマノフ家のもう一つの深刻な問題は、若き皇位継承者であるアレクセイ皇太子の血友病であった。

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ニコライ2世 画像は「Wikipedia」より

 ニコライ2世は代替療法に頼ることを決め、僧侶でヒーラーとしての評判が高かったラスプーチンに白羽の矢を立て、ロマノフ家の宮廷に招き入れて皇太子の治療にあたらせると、奇跡的にもアレクセイは快方へ向かったのだった。

 こうして皇帝から絶大な信認を勝ち取ったラスプーチンだったが、彼が王位に近い存在であることは、教会、貴族、そして民衆の間で疑念と嫉妬を招いた。粗野で酒好き、そして既婚女性と浮気をしたりするなど、社会規範を度々無視するラスプーチンの厚かましい行動は反感を招き、中には彼を異端者と呼ぶ者も出てきた。

 さらにラスプーチンが宮廷を完全に掌握しているという噂も広まり始め、ロシアを影から支配しているのはラスプーチンであるという“陰謀論”が広まった。ある一派は国と皇帝を救うには、ラスプーチンの悪意ある影響力を消し去る必要があると確信し、それはつまりラスプーチンの暗殺を実行することであった。

 暗殺の主犯格で皇帝の従弟でもあるフェリックス・ユスポフ公爵は当日午前1時、新築祝いの酒宴にラスプーチンを誘いモイカ宮殿へ連れて来た。2階には共犯者の4人、ドミトリー大公、保守派議員のプリシケヴィチ、ラゾヴェルト医師、陸軍将校のスホーチン大尉がすでに待機していた。

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フェリックス・ユスポフ 画像は「Wikipedia」より

 ラスプーチンに供された料理にはラゾヴェルト医師によって毒(青酸カリ)が盛られていたが、彼は何の変化をも見せず料理に舌鼓を打っていた。

 時間は徒に過ぎていき、不安になったユスポフは席を立つと別屋に行き銃を持って戻り、ラスプーチンを背後から撃った。

 ラスプーチンは床に倒れ殺害に成功したかに見えたが、ユスポフが脈を確かめようとラスプーチンの首に触れた瞬間、ラスプーチンの目がカッと開き、立ち上がると歩きはじめ雪が積もる屋外へと出ていった。

 後を追ったプリシケヴィチは4発の銃弾を発射し、スプーチンは雪の上に倒れた。ラスプーチンの遺体は縛られ、毛皮のコートに包まれて袋に入れられ、ペトロフスキー大橋から川に投げ捨てられたのだった。

 これがユスポフの回顧録『ラスプーチン』(1927年)による暗殺の概要だが、ラスプーチン暗殺に関する捜査資料の大半は現存していないことから、ユスポフらの証言の信憑性について疑問が残る。

 イギリスの情報部員が暗殺したという説もある。第一次世界大戦真っ只中の当時、イギリスは非戦派のラスプーチンの影響力を警戒していたともいわれ、ロシアが戦争から撤退しないようにラスプーチン暗殺に着手したという説だ。

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

■ラスプーチン“伝説”は想像力の産物!?

 そして第3の仮説は思わず拍子抜けするものだ。

 米メディア「Mental Floss」の記事によればラスプーチン暗殺事件を捜査した当時のサンクトペテルブルク警察署長が、犯人たちの行動はこれまでのキャリアの中で最も“無能”なものであったとの言及を行っていたという。警察署長はこの事件において暗殺計画も遺体処理においてもあまりにも杜撰であることを指摘したのである。

 遺体を急いで捨てようと慌てた一行は、袋に重しを入れるのを忘れており、1917年の検死結果によると遺体からは毒物の痕跡は発見できていない。

 1934年には作家のジョージ・ウィルクスが『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』誌上で、ユスポフの記述から考えられる可能性は1つしかない、すなわちラスプーチンにはシアン化物が投与されていなかったと述べている。

 ウィルクスは「ラゾヴェルト医師がラスプーチンを毒殺しようとしたのなら、それは失敗したことになる」と記しているのだ。

 その約20年後、ラゾヴェルト医師は​​この疑惑を認めた。彼は臨終の床で、土壇場で良心と“ヒポクラテスの誓い”に従って毒を無害な粉末にすり替えたと告白したのだという。

 最初の銃撃でラスプーチンが死ななかったのも、単にユスポフが銃の扱いに不得手であったためである可能性も疑われてくるだろう。

 毒が通用せず、銃で撃ってもなかなか死ななかったというラスプーチンを悪魔や死神のように描いた“伝説”は、実は犯行グループの杜撰さが想像力を膨らませる余地を多く残した結果であるとすれば確かに拍子抜けは否めないが、可能性としては大いにあり得そうでもある。

参考:「Mental Floss」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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