「74分間の皆既日食」1973年、超音速観測所コンコルドが見た奇跡

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Image by Jan Haerer from Pixabay

 2027年8月2日、ヨーロッパや北アフリカの一部では、非常に長い皆既日食が観測される。太陽が完全に月に隠れる時間は、実に6分23秒。これは陸上で観測されるものとしては、2114年まで破られることのない記録的な長さだ。

 しかし、天文学の歴史には、この記録を遥かに凌駕する、信じがたい観測が存在した。1973年、ごく一握りの人々が目撃した皆既日食の継続時間は、なんと74分間。これは一体、どのようにして成し遂げられたのだろうか。

月の影を追いかける科学者たち

 皆既日食とは、地球に落ちる月の影の中に入ることで観測できる天体ショーだ。この影は猛烈なスピードで地表を移動していくため、通常は数分で終わってしまう。しかし、もし影と同じ速度で移動できれば、理論上は観測時間を延ばすことが可能だ。

 もちろん、徒歩や車で影を追いかけるのは現実的ではない。そこで科学者たちが目をつけたのが、高速で飛行するジェット機だ。例えば2024年の北米日食では、NASAがWB-57ジェット機を飛ばし、月の影を追跡。これにより、地上の観測者をはるかに超える6分22秒もの間、皆既日食のデータを収集することに成功した。

 科学者たちがここまでして観測時間を延ばしたいのには理由がある。皆既日食は、普段は太陽の眩い光に隠されている「コロナ」を観測する絶好の機会だからだ。太陽を取り巻くこの超高温のガス層は、地球の通信やGPSに影響を与える「宇宙天気」を理解する上で極めて重要であり、1秒でも長い観測が貴重なデータをもたらすのである。

伝説の74分間、超音速機コンコルドの挑戦

 NASAのジェット機による観測も見事だが、1973年に行われた挑戦は、まさに異次元のスケールだった。その主役は、当時最新鋭の超音速旅客機「コンコルド」だ。

 この日、科学者たちを乗せたコンコルドは、アフリカ大陸の西、カナリア諸島を離陸し、月の影を追いかけて超音速で飛行。チャドに着陸するまで、なんと74分間も皆既状態を維持することに成功したのだ。

 この計画は、極めて精密な計算の上に成り立っていた。月の影が通過するルートに、わずか2分早く到着するだけで、観測時間は25分も短縮されてしまうほど、タイミングが厳密に管理されていたという。この歴史的なフライトに搭乗したのは、5つの研究グループから集まった少数の科学者とクルーだけだった。

「コンコルドに搭乗した我々のグループが記録した74分という時間は、未だに破られていない。控えめに言っても、生涯忘れられない経験だった」。当時搭乗していた科学者の一人、ドナルド・リーベンバーグ氏は、その感動をそう語っている。

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

空飛ぶ観測所が拓いた未来

 コンコルドによる74分間のフライトは、単なる記録樹立に留まらなかった。この成功は、超音速機が天体観測のための「空飛ぶ観測所」として非常に有効であることを証明し、太陽コロナ研究に大きな進歩をもたらした。太陽の表面よりもコロナがなぜ遥かに高温なのか、といった長年の謎を解き明かすための貴重なデータが、この飛行によって得られたのである。

 コンコルドはその後、商業的な日食観測ツアーにも利用されたが、1973年の偉業に匹敵するものはなかった。そして現在、欧州宇宙機関(ESA)は「Proba-3」ミッションによって、宇宙空間で人工的に日食を再現し、いつでも太陽コロナを観測する技術を確立しようとしている。

 技術は進化し、観測手法は変わっても、空を駆け抜け、月の影を74分間も追い続けた科学者たちの情熱と挑戦は、天文学の歴史に燦然と輝く伝説として、これからも語り継がれていくだろう。

参考:IFLScience、ほか

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