“人間の皮”で装丁された「人皮装丁本」― 世界に実在する忌まわしき書物とその狂気の物語

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 人間の皮膚で装丁された本―その言葉を聞いただけで、背筋が凍るような恐怖を感じる人も多いだろう。映画『死霊のはらわた』に登場する「ネクロノミコン」のように、それはフィクションの中だけの存在だと思われてきた。

 しかし、この世には、実際に人間の皮を使って作られた「人皮装丁本(じんぴそうていぼん)」が、確かに存在するのだ。それらはなぜ作られたのか。歪んだ探求心、究極の処罰、そして奇妙な遺言…。それぞれの本に刻まれた、恐ろしくも哀しい3つの物語を紐解いていこう。

CASE 1:医師の狂気―「人間の魂に関する本は、人間のカバーを持つべきだ」

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Image: Wellcome Collection (CC BY 4.0)

 19世紀フランス。医師でありながら、本の装丁に異常な情熱を注ぐ男がいた。その名は、ルドヴィク・ブラン。彼はある日、勤務先の精神病院で亡くなった身元不明の女性患者の遺体から、一枚の皮膚を剥ぎ取った。そして、その皮を自らなめし、長年大切に保管していたという。

 時を経て、彼はその皮膚を使い、2冊の本を装丁する。そのうちの一冊、アルセーヌ・ウーセの哲学書『魂の運命』の余白に、彼は自身の行為を正当化するかのように、こう書き記した。

「人間の魂に関する本は、人間のカバーを持つべきだ」

 なんという歪んだ論理だろうか。彼はまた、処女性に関する医学論文集にも同じ皮膚を使い、「その主題にふさわしい装丁に値する」と満足げに記している。彼の行為は、科学的探究心や故人への敬意とは全く異なる、純粋な狂気と所有欲の産物だった。この本は近年までハーバード大学に所蔵されていたが、2024年、「その出自と歴史が倫理的に問題である」として、ついにその忌まわしい皮のカバーは取り外されることとなった。

CASE 2:犯罪者への処罰―その皮は、自らの罪を語り続ける

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By Geni – Photo by user:geni, CC BY-SA 4.0, Link

 1828年8月11日、イギリス。国中を震撼させた「赤納屋殺人事件」の犯人、ウィリアム・コーダーの公開処刑を一目見ようと、1万人近い群衆が集まっていた。恋人マリア・マーテンを惨殺した彼の罪は、死をもって償われるだけでは終わらなかった。

 彼の遺体は解剖された後、その皮膚の一部が外科医ジョージ・クリードによって剥がされた。そして、その皮を使い、事件の顛末を記した2冊の本が装丁されたのだ。犯罪者の皮で、その罪を永遠に語り継がせる―それは、見せしめであり、究極の処罰だった。そのうちの1冊は、今もイギリスの博物館のガラスケースの中で、おぞましい輝きを放ちながら、訪れる人々に静かにその罪を告白し続けている。

CASE 3:盗賊の遺言―「俺の皮で本を作ってくれ」

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Image by Agnieszka from Pixabay

 ほとんどの人皮装丁本は、皮膚の提供者の同意なしに作られている。しかし、この原則から外れる、極めて奇妙な一冊が存在する。米マサチューセッツ州の悪名高き盗賊、ジェームズ・アレンの自伝だ。

 1837年、獄中で死を目前にしたアレンは、驚くべき遺言を残す。「俺の皮を剥ぎ、俺の人生を記したこの本を2冊装丁してくれ」。そして、その2冊を渡す相手まで指定した。1冊は、自分を捕らえ最後まで抵抗した勇敢な被害者、ジョン・フェノ・ジュニアへ。もう1冊は、自分の主治医へ。

 彼の遺言は忠実に実行された。その本の表紙には、ラテン語でこう刻印されている。「この本はウォルトン(アレンの偽名)の皮で装丁されている」。罪人でありながら、その人生の物語を自らの身体の一部をもって永遠に残そうとした男。彼の最後の自己顕示欲が生み出したこの一冊は、他のどの人皮装丁本とも異なる、異様な存在感を放っている。

闇の書庫に眠る、人間の狂気

 これらの本は、単なる不気味な骨董品ではない。それは、人間の歪んだ探究心、残酷な処罰の歴史、そして奇妙な自己顕示欲の記憶が刻み込まれた、“負の歴史遺産”だ。ある者はそれを「残虐行為の証拠として価値がある」と言い、ある者は「燃やすべき忌まわしい人工物だ」と言う。

 もしあなたが古本屋の片隅で、奇妙な手触りの古書を見つけたなら…。それは、決して開けてはならない、人間の狂気が詰まった「呪われた書物」なのかもしれない。

参考:MENTAL FLOSS、ほか

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