NASAが描く未来の月面都市、それは“ガラスの泡”だった ― 月の砂を“チンして”作る自己修復する家

人類が再び月を目指す「アルテミス計画」が進む中、NASAはさらにその先を見据えた、驚くべき構想を明らかにした。それは、宇宙飛行士が月面に長期滞在するための住居を、なんと「月の砂」から作り出すというSFのような計画だ。そして、その住居の姿は、我々の想像をはるかに超える巨大な“ガラスの泡”だった。
“電子レンジ”で月の砂を溶かし、巨大なガラスドームを作る
この革命的なアイデアを考案したのは、米国の宇宙工学企業「Skyeports」社だ。彼らが着目したのは、月の表面を覆う「レゴリス」と呼ばれる砂の中に、ガラスの主成分であるケイ酸塩が豊富に含まれていることだった。
計画はこうだ。まず、月面に到着した宇宙飛行士が、レゴリスから「ルナ・グラス」と呼ばれるガラス成分を収集する。次に、それを「スマート・マイクロウェーブ炉」と呼ばれる特殊な装置に入れる。これは、家庭用の電子レンジと同じ原理で、マイクロ波を使ってルナ・グラスを高温で溶かすというものだ。
そして、溶けて液体状になったガラスに、巨大なガスパイプで空気を送り込み、シャボン玉のように大きく膨らませる。無重力に近い環境では、液体は自然に球形になろうとするため、美しい球形の“ガラスの泡”が完成する。これが冷えて固まれば、透明で巨大な居住空間の出来上がりだ。

鉄より強く、自己修復する“魔法のガラス”
ガラスでできた家と聞くと、その強度に不安を感じるかもしれない。しかし、Skyeports社のCEOであるマーティン・ベルムデス博士によれば、月の砂に含まれるチタンやマグネシウムといった金属を混ぜ込むことで、ガラスは鉄よりも強くなるという。
さらに、特殊なポリマーを配合することで、微小な隕石の衝突や「月震(月の地震)」によってできたひび割れが、自然に修復される「自己修復ガラス」の開発も視野に入れている。
この構想が画期的なのは、地球から重い建材を運ぶ必要がなく、ほぼすべての材料を現地調達できる点だ。月への物資輸送には莫大なコストがかかるため、これは月面開発における最大の課題を克服する、まさに切り札となり得る。

ガラスの泡の中で野菜を育て、酸素を生み出す
この“ガラスの泡”は、単なる居住空間にとどまらない。その透明な壁は、宇宙飛行士の精神的な健康を保つだけでなく、太陽光を取り込み、内部で植物を育てることを可能にする。
複数の泡を重ねて層を作ることで、暖かい層と冷たい層の間に結露を発生させ、水を循環させる。これにより、野菜や植物を栽培し、食料を確保すると同時に、光合成によって酸素を生み出す、自己完結型の生態系(エコシステム)を構築することができるのだ。
ベルムデス博士の夢は、さらに広がる。いずれは、数百メートル規模の巨大なガラスの泡をいくつも作り、それらをガラスの橋で繋いだ「月面都市」を建設したいと考えている。「地球を完全に再現することはできないが、かなり近いものができるだろう」と彼は語る。
この壮大な計画は、まだ始まったばかりだ。しかし、NASAの革新的先進コンセプト(NIAC)プログラムの支援を受け、その実現に向けた研究は着々と進められている。数年後には国際宇宙ステーションでの実証実験も予定されているという。
人類が、月の砂から生まれたガラスの家で暮らし、そこで採れた野菜を食べる。そんなSFのような未来が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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