「最も近親相姦の進んだ一族」に“葬式詐欺”で騙された ― ドキュメンタリー作家が明かす、ウィテカー家の衝撃的な素顔

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「彼らは私に向かって吠え、目はそれぞれ違う方向を向いていた」

　ドキュメンタリー作家のマーク・ライタ氏は、ウェストバージニア州の片田舎に住む「ウィテカー家」と初めて接触した時の衝撃を、そう振り返る。一卵性双生児の兄弟の子供同士が結婚したことから始まったとされる、何世代にもわたる近親相姦。その結果、一族の多くは深刻な身体的・精神的な障害を抱えているという。

　ライタ氏は、この「アメリカで最も近親相姦の進んだ一族」と呼ばれる家族の閉ざされた生活を記録し、世界に衝撃を与えた。しかし、彼らが信頼関係を築き始めた矢先、ライタ氏は一家から残酷な“裏切り”に遭うことになる。

映画『脱出』さながらの狂気―ウィテカー家との初接触

　ライタ氏が初めてウィテカー家を訪れたのは2004年。警察官の同行のもと、舗装路がやがて未舗装の道に変わる、人里離れた山奥へと足を踏み入れた。そこで彼が目にしたのは、ホラー映画『脱出』の一場面を彷彿とさせる、常軌を逸した光景だった。

「トレーラーハウスの周りを人々がうろついていた。目はあらぬ方向を向き、我々に向かって犬のように吠えかかってきた」

「ある男は、話しかけるとただ絶叫して走り去り、ズボンが足首までずり落ちたままゴミ箱を蹴り飛ばす。それが何度も繰り返されるんだ。私が今まで目撃した中で、最も狂った光景だった」

　当初、ウィテカー家は極度の警戒心を示し、ライタ氏に銃を突きつける家族さえいたという。しかし、ライタ氏は粘り強く彼らと向き合い、時間をかけて徐々に信頼を勝ち取っていった。彼は一家の日常をYouTubeで発信し、視聴者から寄せられた寄付金で家の修繕を手伝うなど、彼らの生活を支援し続けた。

10万円を騙し取られた「ニセ葬式」事件

　しかし、その信頼関係は、ある事件をきっかけに崩壊する。ある日、ライタ氏は、一家の一員であるラリーの娘・BJから、「父のラリーが心臓発作で亡くなった」と連絡を受けた。哀れに思ったライタ氏は、葬儀費用として1000ドル（約15万円）をBJに寄付した。

　しかし、その直後、彼は信じられない事実を知る。ラリーはピンピンして生きていたのだ。

　後に公開されたYouTubeの動画で、ライタ氏は生きてるラリー本人にこの“死亡説”について問いただしている。ラリーは「いや、昨夜ビデオでその話を聞いただけだ」と、関与を否定。結局、娘のBJが「葬儀費用が必要だ」と嘘をつき、ライタ氏を騙していたことを白状し、謝罪した。

それでも続く“奇妙な関係”

　多くの人なら、この裏切りに愛想を尽かし関係を断ち切っただろう。しかし、ライタ氏とウィテカー家の奇妙な関係は、その後も続いている。彼はその後も一家の元を訪れ続け、最近では、彼らの移動式住居が火事で焼失した際にも、多額の寄付を行っている。

　純粋な支援の心を踏みにじられながらも、なぜ彼は彼らと関わり続けるのか。それは、単なる被写体と撮影者という関係を超えた、何か複雑で、歪な絆が生まれているからなのかもしれない。

　ウィテカー家は、社会から隔絶された環境で独自のルールと倫理観の中で生きている。ライタ氏が見た「狂気」も、彼らを騙した「嘘」も、すべてはその特殊な環境が生み出した生きるための術だったのだろうか。その答えは、閉ざされた一族の心の内にしか存在しないのだろう。

参考：Mirror、ほか

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