チンパンジーが「内戦」を始める —— 200頭の群れが二派に分裂、24頭が死亡

イラン情勢を見ていると、「戦争とは人間の業なのか」と考えたくなるが、その答えはどうやらもう少し根深いようだ——。
ウガンダのキバレ国立公園に生息するチンパンジーの大集団が、かつての仲間同士で殺し合う「内戦」状態に陥っていることが、科学誌『サイエンス』に掲載された研究によって明らかになった。これは野生チンパンジーで確認された初の事例であり、霊長類研究の世界に衝撃を与えている。
舞台となったのは「ンゴゴ」と呼ばれる地域。ここには世界最大規模の野生チンパンジー集団が暮らしており、その数はおよそ200頭に上る。研究チームは30年以上にわたってこの集団を観察してきたが、かつて同じ群れで共に行動し、毛づくろいをし、縄張りをパトロールしていた個体同士が、気づけば互いを命がけで排除しようとしていた。
テキサス大学オースティン校の進化人類学者アーロン・サンデルらの研究チームは、24年分の社会ネットワークデータ、10年分のGPS追跡記録、30年分の個体数データを分析した。その結果、集団は2015年頃から「西グループ」と「中央グループ」に分極化し始め、2018年には完全な分裂が確認されたという。
分裂のきっかけは「橋渡し役」の死?
なぜ、かつてひとつだった群れが真っ二つに割れたのか。研究チームが注目したのは、「橋渡し役」と呼べる存在の消滅だ。2014年頃、複数の成熟したオスが相次いで死亡した。このオスたちはそれぞれのグループ間を行き来し、関係を維持する「つなぎ役」として機能していたと見られている。橋渡し役を失った集団は、その後急速に分極化していった。
2015年には、オスの支配階層にも変動が生じた。これが重なったことで、両グループの回避行動は顕著になり、かつての仲間との接触を互いに避けるようになっていく。日本でよく言われる「組織の要」が抜けた瞬間に一気に崩れる、あの感覚に近いかもしれない。
完全に分裂した2018年以降、状況はさらに深刻さを増した。縄張りをめぐる衝突が激化し、少なくとも24頭が殺された。成熟したオスが集団で別グループのオスを攻撃し、2021年からは子殺しも頻繁に観察されるようになった。睾丸を引き裂かれるなど、その攻撃の凄惨さはNBCニュースの報道でも詳しく伝えられている。

「チンパンジー内戦」が示す、人間への問い
研究チームは慎重に言葉を選びつつも、こう述べている——「人間社会における分極化や戦争を、民族・宗教・政治的対立に帰したくなる気持ちはわかる。しかし今回の発見は、そうした文化的マーカーがなくても、関係性の変化だけで集団が分裂し、集団的暴力が生まれることを示唆している」。
チンパンジーの「内戦」が科学的に確認されたのは、1970年代のタンザニア・ゴンベでの観察以来のことで、食料の人工補給なしに自然状態で確認されたのは今回が初めてとなる。つまり、これは特殊な環境下での例外的な行動ではない。野生の自然な状態でも、仲間は敵になりうるのだ。
「なぜ人は争うのか」という問いは、哲学や宗教が何千年も格闘してきたテーマだ。今回の研究は、その答えの一端が、共通の祖先を持つ霊長類の社会構造の中に埋め込まれているかもしれないことを示唆している。
人間とチンパンジーが分岐したのはおよそ600万年前。それでも、集団の分裂と暴力のメカニズムはどこか似ている——そのことが、少し怖くもあり、また興味深くもある。
参考:ScienceAlert、ほか
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2024.10.02 20:00心霊チンパンジーが「内戦」を始める —— 200頭の群れが二派に分裂、24頭が死亡のページです。内戦、ウガンダ、チンパンジーなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
