ブラジルを震撼させた「ルス・チュパチュパ事件」前史 ── “吸血UFO”は軍の調査より前から来ていた

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 ブラジル北部の住民を恐怖の渦に巻き込んだ“ルス・チュパチュパ事件”だが、軍の調査が始まる1年前にすでに“吸血UFO”が跳梁跋扈していたことが発掘された文書から明らかになっている――。

■ブラジルの“吸血UFO”前史

 ブラジルの住民を震撼させ被害者も多数にのぼった吸血UFO事件である“ルス・チュパチュパ事件”を受けて、ブラジル空軍が1977年秋からブラジルのUFO事件史の中で最大の作戦「プラート作戦(Operacao Prato)」を実施している。

 しかしその前年からUFOが住民を襲っていたことが最近になってわかっている。研究者のヘイトール・コスタ氏と心臓専門医のマルコ・セイシャス氏は1976年にピアウイ州で発生した未確認飛行物体(UFO)の活動を記録した報道記事を網羅的に調査した結果をウェブサイト「operacaoprato.com」で公開している。この取り組みは「プラート作戦」の1年前にピアウイ州を恐怖に陥れた出来事を時系列順に整理することを目的としている。

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画像は「Portal Vigília」より

 ピアウイ州での事件を報じた主要紙である新聞「O Dia」の記事を収集することで研究者たちは一般に“ルス・チュパチュパ事件”として知られるこの現象が、これまでのUFO研究における定説よりもはるかに広範囲かつ早期に起きていたことを示す物的証拠を提示している。

 文書からはピアウイ州にある自治体「ペードロII」の農村住民が、異常に明るい光を発する飛行物体の恐怖に最初に苦しめられた地域の一つであったことが明らかになった。

 1976年7月には住民がこの“生き物”のようなUFOを恐れて夜間の外出を避け、夜間の狩猟などの伝統的な習慣を放棄したと新聞が報じていた。報告によると、その物体はカンガイアやラデイラ・ド・フェリペなどの山岳地帯を頻繁に巡回し、目撃者を恐怖に陥れる断続的なブーンという音を発していたことが記されている。

 最初の被害者たちは、光に視覚的または物理的に接触した後、神経系の緊張と身体的衰弱の明確な症状を示した。ロベルト・ファリアス医師の治療を受けた農夫のフランシスコ・ブラス氏は、光線に打たれた際の極度の恐怖から「部分的な精神的衰弱」の状態を示したという。

 別の住民、ライムンダ・アントニア氏は 1976年7月6日付の新聞「O Dia」に次のように報告した。

「私が見たとき、頭上に明るい光がありました。私が身をかがめている中、それが私のエネルギーや血液を吸い取っているのだと感じました」

 この「吸い取る」という表現は、光る物体によってエネルギーや血液が吸い取られる感覚を表す用語としてすぐに定着した。まさにそれは“吸血UFO”なのである。

 ピアウイ州のほかの都市にも“吸血UFO”の恐怖はすぐに広がり、カンポ・マイオール、テレジーナ、モロ・ド・ウルグアイ、ピサラでもこうした物体の存在が記録されている。

 コスタ氏とセイシャス氏がまとめた記録には、UFOの放射エネルギーの照射によって、被害者が直接的なダメージを受けたケースの詳細が記されている。

 テレジーナのポティ川で起きたオスマー・モレイラ・デ・ソウザ氏の事例は、記録に残る中でも最も深刻なものの一つである。

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画像は「Portal Vigília」より

 ソウザ氏は巨大な光る物体に追い回されたということだが、「白熱した金属の摩擦」によるものと思われる火傷を負った後、地上約6メートルまで浮上させられたと証言している。1976年7月28日付の新聞「O Dia」への証言の中で、ソウザ氏は飛行物体の一部を「黒と赤の金属製の四角い脚があり、下からさまざまな色のワイヤーが出ている」と表現している。

 医療従事者たちは前例のない事態への対処法が分からず、負傷の深刻さを軽視することが多かった。ソウザ氏は腕全体に火傷を負っていたにもかかわらず、軽傷だと思い込んでいる看護師たちの嘲笑の中で治療を受けたという。

 ペードロII出身のフランシスコ・フェレイラ氏もその一例で、「光を直接浴びた」後、高熱、悪寒、頭痛で3日間寝込んだ。母親のマリア・デ・ジェズス氏はその日、息子が「完全に感覚が麻痺」してめまいを起こした状態で帰宅したと報告している。

 被害者に発熱、頭痛、しびれ、倦怠感といった症状の再発が起こることも珍しくなかったことが当時の新聞で報告されており、この奇妙な負傷を治す薬はなかった。

 ウェブサイト「operacaoprato.com」が提供する歴史的再解釈は、これらの証言が「豊かな想像力」の産物ではなく、現実のトラウマ体験であったことを力説している。お互いを知らない被害者たちの証言の一貫性は、正体不明のUFOがこの地域で暗躍していたことを裏付けている。

 都市部の住民の中には信じようとしない者も少なくなかったが、郊外や農村部の住民は未知の脅威に苦しめられており、これらの文書は政府が「プラート作戦」を決定するずっと以前から、“謎の光”がすでに具体的に記録された現実であったことを証明している。

 コスタ氏とセイシャス氏の仕事は、現地調査とアーカイブの研究こそが謎を解き明かすための地道でありながらきわめて重要な取り組みであることを示している。謎に包まれた事件であっても改めてさかのぼって検証できるケースは考えられているよりも多いのかもしれない。

参考:「Portal Vigilia」、「operacaoprato.com」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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