「死体を見せろ、宇宙船を見せろ」—— 80年間UFOを追い続けた人類、決定的証拠がいまだ出ない理由

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 かつて「空飛ぶ円盤」は、一部の変わり者だけが熱を上げるニッチな趣味だった。それがいまや、大統領選の争点にすらなりかねない国民的話題である。人類がエイリアンを本気で追い始めて、およそ80年。カメラも桁違いに進化したのに、なぜか「決定的な一枚」だけがいつまでも出てこない。今回は、この壮大な追いかけっこの歴史を振り返ってみよう。

すべては1947年の「9つの物体」から始まった

 物語の号砲が鳴ったのは1947年6月24日。民間パイロットのケネス・アーノルドが、ワシントン州レーニア山の付近で9つの飛行物体を見たと語ったのが、アメリカで初めて大々的に報じられたUFO目撃事件とされている。

 この証言が呼び水になり、目撃報告が全米で連鎖した。数日後の7月2日には、ニューメキシコ州ロズウェル近郊の牧場で正体不明の破片が見つかる。

 当局は最初こそ「飛行円盤の残骸だ」と発表しながら、24時間と経たないうちに「あれは気象観測気球でした」と前言を撤回した。この手のひら返しが、のちに数十年続く陰謀論の火種になる。

 慌てた空軍は公式調査に乗り出す。1948年に始まった調査は、やがて「プロジェクト・ブルーブック」と名を変え、1969年までに1万2600件を超える目撃報告を検証した。だが結論はあっさりしたもので、「地球外由来の証拠も、脅威となる証拠もなし」。プロジェクトは静かに幕を閉じたが、大衆の熱はまったく冷めなかった。

回収された残骸のアルミ箔を持ち上げるジェシー・A・マーセル(英語版)少佐 Fort Worth Star-Telegram – https://library.uta.edu/roswell/images, パブリック・ドメイン, リンクによる

エリア51とロズウェル——否定されるほど燃え上がる二大聖地

 UFOファンにとっての「聖地」といえば、ネバダ州の軍事基地エリア51である。建設が始まったのは1951年。以来この場所は「政府がエイリアンの遺体を隠している」という陰謀論と分かちがたく結びついていった。

 面白いのは、米政府がこの基地の存在を公に認めたのが2013年だったという点だ。機密解除されたCIA文書によれば、1950年代にここで行われたU-2偵察機の試験飛行こそが、周辺で相次いだUFO目撃の正体だったとされる。隠していたのは宇宙人ではなく、冷戦下のスパイ機だったというわけだ。

 もう一方の聖地ロズウェルは、さらにドラマチックだ。一度は沈静化した騒ぎが、1978年に情報将校ジェシー・マーセルが「気象気球というのは隠蔽のための作り話だった」と暴露したことで再燃。回収現場で人型の遺体を見たという証言まで飛び出し、「遺体はエリア51に運ばれた」との噂が独り歩きを始めた。

 これに対し空軍がようやく本腰を入れて反論したのは1997年。「遺体とされたものはパラシュート実験用のダミー人形で、目撃者は日付を取り違えたのだろう」と説明した。

 報告書をまとめた退役大佐は、自分たちは秘密を守るのすら苦手なのに本格的な陰謀など仕組めるはずがない、との趣旨を語ったとされる。皮肉の効いた弁明だが、信じるか信じないかはあなた次第、といったところだろう。

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ハリウッドが焚きつけ、スマホが突きつける矛盾

 この80年、現実の目撃事件と歩調を合わせるように、宇宙人を描いた映画やドラマが量産されてきた。『未知との遭遇』『E.T.』『スタートレック』『Xファイル』——数え上げればきりがない。

 国防総省の全領域異常解決局(AARO)は2024年の報告書で、こうした作品やネット上の膨大なコンテンツの「氾濫」が、一部の人々のエイリアン信仰を強めた可能性が高いと指摘している。夢を見せる装置が、いつしか「実在の証拠」と混同されていったのだ。

 一方で、信奉者が避けて通れない痛いところを突く声もある。科学ライターのマイケル・シャーマー氏は、誰もがスマホという高性能カメラを持ち歩く時代に、いまだ鮮明な一枚が存在しないことこそ最大の問題だ、と指摘する。死体でも宇宙船でも高品質な映像でもいい、それを見せてくれれば信じる——という言い分は実に真っ当かもしれない。

 否定と暴露、夢と証拠。この綱引きは、まだ決着していない。人類がカメラを構え続ける限り、「あと一枚」を追う狂騒は当分終わりそうにない。あるいは決定的な証拠が永遠に出てこないこと自体が、この80年で最大の謎なのかもしれない。

参考:Daily Star、ほか

TOCANA編集部

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