地平線から迫った乳白色の”壁” —— 冷戦下の米軍偵察機が見た「光のドーム」、正体はミサイル防衛システム無力化装置か

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 1988年秋、北太平洋の上空を飛んでいた米空軍の偵察機が、説明のつかない発光現象を目撃した。

 任務はあくまでソ連のミサイル発射を追跡することだった。ところがコクピットの窓の外に広がったのは、地平線から視界の限界まで空全体を覆うほどの、巨大な乳白色の”壁”だった。

 この現象はのちに「光のドーム」というニックネームで呼ばれるようになる。冷戦下の機密任務の最中に記録されたこの一件は、今なお正体が特定されていない。

ソ連を監視し続けたコブラボール機の役割

 ソ連は原爆開発やスプートニク打ち上げ、後のチェルノブイリ原発事故の対応に至るまで、極めて高い秘密保持能力で知られていた。米国はU-2偵察機や偵察衛星、沈没したソ連潜水艦を回収する深海装置まで動員し、あらゆる手段でその動向を探ってきた。

 その一翼を担っていたのが、アリューシャン列島のシェミヤ空軍基地に配備された偵察機、ボーイングRC-135S「コブラボール」だ。ソ連のミサイル発射を光学・電子センサーで追跡するために特化改造された機体である。

 1988年秋、米空軍パイロットのロバート・ホプキンス氏はこの機体に搭乗し、1987年の米ソ中距離核戦力(INF)条約に基づく「発射による廃棄」任務中のミサイル発射を観測していた。

 ソ連が保有するSS-20中距離弾道ミサイルを既知の着弾地点へ発射する予定で、ホプキンス氏と副操縦士は速度やテレメトリーデータの収集機器を準備し、通常任務のつもりでその瞬間を待っていたという。

音速をはるかに超えて迫った乳白色の”壁”

 ところが発射から間もなく、想定外の現象が起きた。

 ホプキンス氏はのちの取材に対し、左手側、つまりソ連領上空の方角から、半透明の乳白色をした壁のようなものが動いてくるのが見えたと証言している。地上から視界の限界に至るまで空全体を覆うほどの規模で、通常の航空機の飛行速度をはるかに超える速さで急速に接近してきたという。

 その”壁”は機の進路をまたぐように横切り、そのまま東へと進み続けた。通過した後には何もない暗い夜空だけが残っていたと、ホプキンス氏は振り返っている。

 同乗の副操縦士も、その後もう一度だけ同じ現象を目撃したという。あまりの規模と速度に、当初パイロットたちは幻覚を見たのではないか、あるいは見たことのない種類のオーロラ現象なのではないかと考えたと明かしている。

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オーロラか、特殊燃料か、それとも対抗兵器なのか

 だが空軍の科学者たちは、この「見たことのないオーロラ」という説明に納得しなかった。

 検討された仮説はいくつかある。SS-20が使用する特殊な推進燃料が化学反応を起こし発光を生んだ可能性、あるいは上層大気の状態を測定するために散布された、ある種のイオン雲だったのではないかという見立てだ。

 しかしより不穏な見方も存在する。この「光のドーム」は、米国および欧州が構築するミサイル防衛システムを無力化するために設計された対抗手段だったのではないか、という説だ。海外報道によれば、そのようなシステムが実際に機能したのかどうかは、今も明らかにされていない。

 冷戦当時の機密任務の中で記録された一つの発光現象が、いまだ結論の出ないまま残されている。ロシアが現在保有する、米国の防衛網を突破しうる極超音速ミサイルの存在と重ね合わせれば、この種の技術がいまなお現実の脅威になり得るとの指摘は、決して的外れとは言えないだろう。

参考:Popular Mechanics、ほか

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