夜を昼に変える「宇宙の巨大鏡」計画、米当局が承認! 2035年までに5万機、天文学者は「存亡の危機」と警告

画像は「Vimeo」より

 太陽が沈んだあとの真っ暗な夜空から、まばゆい光が地上を照らし出す——。そんなSF映画のような光景が、現実の計画として動き出そうとしている。

 宇宙空間に巨大な鏡を浮かべ、太陽の光を反射させて地上の狙った場所を照らす。「夜を昼に変える」というこの野心的な事業に、アメリカの当局が正式にゴーサインを出したのだ。

軌道上に浮かぶ18メートルの鏡「エアレンディル1号」

 計画を進めているのは、カリフォルニアのスタートアップ企業「リフレクト・オービタル(Reflect Orbital)」だ。同社が打ち上げる衛星の名は「エアレンディル1号(Eärendil-1)」。ファンタジー作品を思わせる響きだが、その中身は極めて現実的である。

 衛星に搭載されるのは、幅およそ18メートルに及ぶ薄膜の反射鏡だ。モーターで自在に角度を変えられるこの鏡が、太陽光を受けて地上の指定された地点へと反射させる。運用高度は約625キロメートル、地球を回る軌道上からピンポイントで光を届ける仕組みだという。

 そして2026年7月9日、この計画は米連邦通信委員会(FCC)によって正式に認可された。空に人工の”太陽”を掲げる構想が、規制当局のお墨付きを得た瞬間である。

5キロを照らす光、2035年までに5万機

 エアレンディル1号が照らし出せる範囲は、少なくとも直径5キロメートルに及ぶとされる。しかも光の強さは調整可能で、月明かり程度の淡い光から、昼間に匹敵する明るさまで自在にコントロールできるという。

 同社の構想はさらに壮大だ。2026年中に2機を投入したのを皮切りに、2030年までに5000機以上、そして2035年までにはなんと5万機を超える衛星群を軌道上に展開する計画だとされている。

 用途として想定されているのは、遭難者の捜索・救助、災害地域の照明、僻地の建設現場の作業灯、さらには農作物の生育期間の延長など。極めつきは、日没後も太陽光パネルで発電を続けさせる「夜間の太陽光発電」だ。夜の概念そのものを塗り替えかねない発想である。

画像は「Vimeo」より

天文学者の悲鳴「光学天文学の存亡に関わる脅威」

 だが、この計画に天文学の世界は震え上がっている。ヨーロッパ南天天文台の研究者ベティ・キオコ氏は、これが光学天文学にとって「存亡に関わる脅威」だと強い危機感を示した。

 ある試算によれば、5万機もの反射衛星が空を埋めれば、広視野望遠鏡で撮影するあらゆる露光画像が台無しになりかねないという。夜空全体の明るさは、現在の3〜4倍にまで達すると見積もられている。人類が何千年も見上げてきた満天の星が、人工の光にかき消されてしまうのだ。

 懸念は天文学にとどまらない。夜の闇を頼りに移動する渡り鳥や昆虫、生態系のナビゲーション、そして私たち人間の睡眠リズムまで——「本来あるべき夜」が失われることの影響は、あまりに広範囲に及ぶと指摘されている。

「夜」は人類が手放してよいものなのか

 遭難者を救い、被災地を照らし、食糧を増やす。リフレクト・オービタルが掲げる大義は、確かに人類にとって魅力的に響く。技術そのものは、まぎれもなく画期的だ。

 しかしその代償として差し出されようとしているのは、地球が生命を宿して以来ずっと続いてきた「夜」という時間である。星空を失った空の下で、鳥は道を見失い、私たちは眠りを妨げられるのかもしれない。

 人工の太陽で夜を消し去るその先に、輝かしい未来が待つのか、それとも取り返しのつかない喪失が待つのか。空を見上げる権利をめぐる議論は、まだ始まったばかりだ。

参考:ZME Science、ほか

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