300年前の『ガリヴァー旅行記』にAIチャットボットそっくりの「文章製造機」が登場していた!? 火星の2つの衛星も151年前に言い当てた風刺小説の不気味な先見性

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初版 (1726年) パブリック・ドメイン, リンク

 誰でも、勉強せずに、安い費用で、哲学や詩や法律の本が書ける——。まるで最新AIの売り文句だが、これは約300年前に出版された小説に登場する発明品の触れ込みだ。

 その小説とは、ジョナサン・スウィフトが1726年に世に出した『ガリヴァー旅行記』。この古典の一節が、現代のAIチャットボットを驚くほど正確に言い当てているとして、いま改めて注目を集めている。

小人の国だけではない、奇妙な「ラガードの学士院」

『ガリヴァー旅行記』といえば、難破した主人公が目を覚ますと小人たちに地面へ縛り付けられていた、リリパット国の場面を思い浮かべる人が多いだろう。卵をどちらの端から割るかで隣国と戦争をしている、というあの有名な風刺だ。

 だが物語は小人の国で終わらない。ガリヴァーは理性的な馬が支配する国など、さらに奇妙な土地を巡っていく。スタジオジブリ『天空の城ラピュタ』の名の由来となった空飛ぶ島ラピュタが登場するのも、この第3篇だ。

 問題の場面は、その第3篇でガリヴァーが訪れる「ラガードの大学士院」にある。ここでは学者たちが、排泄物を食べ物に戻す研究や、キュウリから日光を抽出する研究といった、浮世離れしたプロジェクトに没頭していた。しかも学士院の外の街は貧困にあえいでいたという。

「文章製造機」と巨額投資の要求

 ここでガリヴァーが出会うのが、木とワイヤーで組み上げた巨大な機械を発明した技師だ。この機械を使えば、どれほど無知な人間でも、才能や学問の助けなしに哲学・詩・政治・数学・神学の本を書けるようになる、というのが技師の主張だった。

 仕組みはこうだ。機械にはその言語のあらゆる単語が組み込まれており、周囲に取り付けられた40本の鉄のハンドルを弟子たちが一斉に回すと、単語の並びがガラリと入れ替わる。36人の弟子が浮かび上がった文字列を読み、文の一部になりそうな3〜4語のまとまりを見つけたら、残る4人の書記に書き取らせる。これを何度も繰り返すのだ。

 技師はこの断片を集めれば、いずれ世界にあらゆる学問と技芸の完全な体系を与えられると信じていた。そして、この機械を500台作るための莫大な資金を求めたという。もちろん機械は新しい知識を何ひとつ生み出せていなかった。

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予言か、それとも人間の性の風刺か

 学ばずとも知識が手に入るという約束、価値が証明されていない機械への巨額投資、そして「意味を理解すること」と「文章を生み出すこと」の切り離し。大規模言語モデル(LLM)との共通点は一目瞭然だ。出力が使えるかどうかの判断を、結局は人間に委ねている点まで似ている。

 さらにこの第3篇には、ラピュタの天文学者が火星を回る2つの衛星を発見していた、という記述もある。実際に火星の衛星フォボスとダイモスが発見されたのは1877年、つまり151年後のことだ。スウィフトは公転周期を10時間と21.5時間としたが、実際の値は約7.66時間と約30.35時間で、驚くほど近い。

 もっとも、スウィフトは超能力者ではない。ケプラーの法則や木星の衛星の論文を読み込んだうえでの推測だったとされる。文章製造機も、当時の英国王立協会を念頭に置いた同時代への風刺だったと見るのが妥当だ。

 それでも、300年前の作家が描いた「人類の悪い癖」が、AI時代にそっくり再演されている事実は揺るがない。未来を見通したのはスウィフトの霊感か、それとも人間がいつの時代も同じ夢に投資してしまうだけなのか。少なくとも、彼の想像力が時代の先を走っていたことだけは確かなようだ。

参考:IFLScience、ほか

TOCANA編集部

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