【生命倫理学】あなたはどう考える? 世界初の「頭部移植手術」実施へ!!
まず、健康体のまま死んだドナー(身体の提供者)と、スピリドノフ氏の2人を、同時に頭部と胴体に切り離す。そして「ポリエチレングリコール」という化合物を接着剤のように用いて、スピリドノフ氏の頭部とドナーの身体を結合。さらに脊髄・筋肉・血管を縫合するという。その後、頭部と身体がしっかりと結合して傷が癒えるまでの4週間程度、スピリドノフ氏は昏睡状態に置かれる上、拒絶反応を抑えるために強力な免疫抑制剤も投与される。しかし目覚めると、新しい身体を自由に動かせるようになり、自らの声を失うこともないのだとか。
なお、手術時間は36時間、費用は1,000万ドル(約12億円)、サポートに当たる医師や看護師は150人程度が必要になると見込まれている。博士は今後、手術チームを組織して資金を集め、来年中には手術を執り行いたい考えのようだ。
■成功に自信を見せる当事者たち
このような手術について、当然多方面から批判の声が巻き起こっている。米国神経外科医協会のハント・バチャー会長は、「誰にもこのようなことをする許可を与えたくない。死よりも恐ろしい事態が起こるのではないか」と強い懸念を表明。そもそも想定通りに移植が成功するはずがないと考える医師は多く、「カナヴェロ博士は、脊髄を繋ぎ合わせることがどれほど複雑か理解していない」との声も根強いようだ。しかし博士は、そのような批判を全く意に介さず、手術の成功に自信を見せる。
「何かを成し遂げたければ、それをやってみなければなりません」
「このような(頭部移植の)研究には、過去から様々な蓄積があるのです。ですから、ここで後退するべきではありません」(カナヴェロ博士)
さらに、倫理的な問題があるとの批判について、スピリドノフ氏は「腎臓移植や心臓移植と同じようなものではないか」とした上で、
「心臓移植も、ある時点までは倫理に反するものと考えられていました。人間の心は心臓に宿ると考える人もいましたからね。でも今は、多くの移植手術が行われており、医師は何人もの命を救っているじゃないですか」
「(私ではない)別の誰かで頭部移植の技術が確立する時まで、生きていられるかわからないのです」
ちなみに1970年、米ケース・ウエスタン・リザーブ大学医学部において、サルを用いた頭部移植実験が行われている。その際、頭部移植を受けたサルは拒絶反応を示して8日後に死亡したという。脊髄の結合にも失敗し、自分では呼吸することさえできなかったというが……。まるで小説『フランケンシュタイン』のようなカナヴェロ博士の壮大な計画は、果たして実行に移されてしまうのだろうか。
(編集部)
参考:「CNN」、「The Daily Mail」、ほか
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