マルコ・ポーロは実在していなかった!? 不整合すぎる『東方見聞録』の数々が暴露される!

 誰もが知る中世の大冒険家「マルコ・ポーロ」に“非実在説”が浮上している。コロンブスに先行すること200年前、中国まで辿り着いたといわれるロマン溢れる歴史上の偉人が架空の人物だとすれば驚くばかりだが……。


■マルコ・ポーロは中国大陸に行っていなかった?

 世界最大の動画配信サービス、Netflix (ネットフリックス) でオリジナルドラマ『マルコ・ポーロ』が2015年9月から配信されていて好評だ。今年7月からは“シーズン2”が放映され、元朝の皇帝フビライ=ハンとの関係が多く描かれていることもあり、マルコ・ポーロの中国大陸での実際の足跡がどんなものであったのか、あらためて脚光を浴びることになった。

 しかし皮肉なことに再燃したマルコ・ポーロ人気によって、“非実在説”が蒸し返されることになったのである。いったいどういうことなのか。

マルコ・ポーロは実在していなかった!? 不整合すぎる『東方見聞録』の数々が暴露される!の画像1マルコ・ポーロ(1254-1324) 画像は「Wikipedia」より

 いったん復習から入ろう。1254年、ヴェネツィア共和国(現在のイタリア東北部)で商人の家のもとに生まれたマルコ・ポーロは、『東方見聞録』などによれば1271年、17歳の時、父や叔父などど共に東方への旅に出発したといわれている。陸路でトルキスタン、西域を通って元の都・大都に到着。そこで当時の元朝の世祖フビライ=ハンに重宝がられ、政務に招き入れられた。その後、1292年にイル=ハン国に嫁ぐ王女を送り届ける任務で泉州を出航するまでの17年間もの間、大都を中心に中国大陸内に滞在していたとされている。この旅の模様は後に『東方見聞録』(ルスティケロ・ダ・ピサ著)に綴られることになった。

 この間、1274年、1281年の2度に及ぶ日本のへの侵攻、いわゆる“元寇”の作戦立案にもマルコ・ポーロは関わっていたといわれているが、不正確な記述が多く年代記的につじつまが合わない点が目立つということだ。ナポリ大学の考古学者、ダニーレ・ペトレラ氏によれば、1274年の最初の元寇で日本海に大嵐が起きて元軍の艦隊が滅ぼされたことが記されているという。つまり1度目と2度目の日本侵攻が史実と逆になっているのである。

 また『東方見聞録』では元の帆船は5本マストであることが記されているのだが、日本の側の史料によれば元の海軍艦には3本マストの船体の記録しか残されていないという。

 さらに、木造船体の防水区画を作る際に使う松脂のことをモンゴル軍が“chunam”と呼んでいたことが記述からわかるのだが、実はこの単語はモンゴル語で“無”を意味するもので、ペルシャ語の発音で松脂を意味するものであったのだ。つまりモンゴル語とペルシャ語を混同しているのである。このように、些細なところから『東方見聞録』の不整合性がイタリアの研究でいくつも指摘されることになり、マルコ・ポーロが中国には行っていないという仮説が持ち上がることになったのだ。

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