すべてが真逆に進む「ミラーユニバース」の存在を物理学者が提唱! 宇宙は常に2つ存在する「⇔構造」だった!
我々の宇宙と同時に発生したとされる「ミラーユニバース(鏡の宇宙)」では、全ての事象が反対方向に進行する。そこでは、人々が死後に目覚め、老年を過ごし、大学生活を楽しんでいるというのだ。
様々な分野の知的発見を提供するウェブサイト「Big Think」(6月22日付)が、「ミラーユニバース」の存在を主張する2つの有名物理学者グループの理論を紹介している。荒唐無稽と思われがちな同理論が、科学的にあり得るモデルとして再注目されているようだ。
■時間が逆行するミラーユニバースの復権
1928年、イギリスの理論物理学者ポール・ディラックが反物質の存在を想定した「ディラック方程式」を考案して以来、宇宙誕生時に同数の物質と反物質が存在し、それらが相互作用しているとする「CP対称性」が物理学界で唱えられてきた。
自然界における高エネルギーの衝突中や、人為的に陽子を衝突させる実験などにより、現在までにいくつもの反物質が発見されてきたが、その数は物質に対して圧倒的に少ないことが明らかになっている。反物質は、一体どこに行ってしまったのだろうか?
ここで注目されたのがミラーユニバースだが、1964年に物理学者のジェイムズ・クローニンとヴァル・フィッチが行った実験で、素粒子の間で作用する基本相互作用の1つ「弱い力」がミラーユニバースと矛盾することが分かり、その存在は反証されてしまった。後にこの功績が認められ、2人はノーベル物理学賞まで受賞している。
そんな経緯もあり、ミラーユニバースの存在は物理学から抹消されたかのように思われたが、2004年に入り急展開を迎える。カリフォルニア工科大学の物理学者ショーン・キャロル教授と当時大学院生だったジェニファー・チェンが、“一方向に流れる時間”を説明するために、ミラーユニバース理論を再検証したのだ。
■複数の物理学者がミラーユニバースの存在を提唱
2人はビッグバン時に2つの宇宙が正反対の方向に同時に発生したとするモデルを構想。これによると、我々の宇宙は物質で形成され、ミラーユニバースでは反物質がその役割を果たしているという。そのため、我々の世界では時間が前に進むが、ミラーユニバースでは後ろに進む、というわけだ。
一般的にいって、時間について語る時、我々は熱力学の第2法則を考慮している。いわゆるエントロピーである。エントロピーは徐々に複雑性を増しながら拡散していき、いずれは熱的死を迎え、時間も停止すると言われている。しかし、キャロル教授とチェンはエントロピー理論ではなく、重力理論に注目することで、弱い力と矛盾しないミラーユニバースの存在が可能であると証明した。
2014年には、ジュリアン・バーバー、ティム・コスロフスキ、フラヴィオ・メルカティらが同モデルを検証し、アメリカ物理学速報誌「Physical Review Letters」に投稿。前後に頭を持つローマ神話の神ヤヌスにちなんで名付けられた「ヤヌスポイント」から、2方向に重力が拡張することがコンピュータシミュレーションで明らかになったという。
さらに昨年、キャロル教授はMITのアラン・ガースとチームを組み、熱力学に従った場合でも、同様にミラーユニバースが形成されることを突き止めた。2人は、このことを “2つの頭を持つ時間の矢”と名付けたという。
ただ、問題点もあり、同理論は古典物理学の枠組みでは機能するものの、一般相対性理論や量子力学では検証されていないと指摘されている。ミラーユニバースの存在が確証されるのはまだしばらく先になりそうだ。今後の研究に期待しよう。
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