【写真展】ブローニュの森の娼婦、少数民族ロマ、ピカピカの都市…フランスの違和感を捉えた石川竜一最新作『OUTREMER/群青』が強烈すぎる!

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『OUTREMER/群青』


■写真の力はロジックやコンセプトを超えた所にある

―― アツコバルーの展示では写真のプリントの質感やサイズ、配置は感覚重視で決めたそうですね。

石川 それまでは結構計算して図面を描いて、それぞれの写真の関係性に意味を持たせてやっていた。言葉で考えられる部分でサイズとか並びを決めていたんです。でも、今回は写真だけを見て決めました。「小さくしろ」って写真が言っているからサイズを小さくするみたいな感じで。配置についても情報のバランスは抜きにして並べました。完全に感覚だけで作ったわけじゃないけれど、そのバランスを感覚中心に調整したんです。


―― それはなぜですか?

石川 自分が作ったロジックみたいなものから抜けたもの、漏れたものを作りたかったから。言葉の繋がりで組んでいくと「線」ができてしまう。線を持たせないないようにしたほうが、言葉の繋がりで読み解けない「出会った感」というか、僕がフランスで考えていた「こぼれ落ちるもの」が表せると思って、見る人が迷うような作りにしたんです。僕はもともと語彙をそんなに持っていないんですけれど、それがさらにエスカレートした感じ。フランスに行った初めの頃に考えていたのは「写真を通して言葉で考えるということはどういうことなのか?」ということで、「自分は言葉で考えることから逃げているだけなのか?」を確認したんです。改めて一度言葉で考えてみよう、言葉や社会のシステムについて調べたり構造の部分を見てみよう、と思ってやっていくほどこぼれ落ちるものがあるというか、それを写真に撮っている感じ。写真で考えることは逃げじゃないなってわかりました。

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『OUTREMER/群青』


―― 「写真を通してものを考えることができることはわかった。そのうえで、写真でこそ言葉やロジックからあふれるものをすくい上げられるんじゃないか」という所に至ったということですか?

石川 そうですね。そういう感じです。やっとみんなが普通に言っている所にたどり着いた。もちろん、頭では言葉として理解していて、本を読めば書いてある。でも、それがどんなことなのか自分で確認しないとなじまない。それが自分の中のリアルな感覚としてわかったということですね。

――以前、アツコバルーでの大竹昭子さんとのトークショウで、パリからスカイプで参加したアツコさんが「フランスで写真作品を発表するさいに作家は政治的なポジションを明確にすることを要求される。でも、石川竜一は右とか左とか関係なしに『人間』そのものを見ている。そこが素晴らしい」というようなことを言っていましたね。

石川 僕もできるだけそこをやろうとしたんです。フランスで取材された時にもそういう質問をされて、グチってもしょうがないんだけど「そうじゃないだろう。特に写真はそうじゃないだろう」って。写真には言葉じゃつかめないロジックとロジックの間に流れているもの、コンセプトとかじゃない所が写る。そこに僕は写真の可能性を見ている。そのこと自体を、僕はフランスで意識できたってことなんです。


 言葉が通じず社会的、文化的な背景もわからないフランスに単身、むき身で対峙したことから、はからずも「写真とは何か」についての深い思考に至った石川さんの写真展が、大阪のサードギャラリーアヤで1月27日から始まる。初日にはトークイベントも用意されている。この機会にぜひ足を運んでみてください。


■作者プロフィール
石川竜一(いしかわ・りゅういち)
写真家。1984年沖縄県生まれ、沖縄県在住。沖縄国際大学社会文化学科卒業。写真家・勇崎哲史に師事。2015年に木村伊兵衛写真賞、日本写真協会新人賞、第49回沖縄タイムス芸術選賞奨励賞を受賞。日産アートアワード2017ファイナリストに選出される。近年の主な展覧会は『okinawan portraits 2012-2016』(エプソンイメージングギャラリーエプサイト、東京、2016年)、『BODY/PLAY/POLYTICS』(横浜美術館、横浜、2016年)、『六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声』(森美術館、東京、2016年)、『考えたときには、もう目の前にはない』(横浜市民ミュージアムあざみ野、横浜、2016年)、『+zkop』(沖縄コンテンポラリーアートセンター、那覇、2015年)ほか多数。主な写真集に『絶景のポリフォニー』、『okinawan portraits 2010-2012』、『adrenamix』『okinawan portraits 2012-2016』(以上赤々舎)、『CAMP』(SLANT)などがある。


■写真展情報
石川竜一写真展「OUTREMER/群青」
開催期間:2018年1月27日〜2月17日
開場時間:12:00〜19:00(火曜日〜金曜日)
12:00〜17:00(土曜日)
休廊日:日曜日・月曜日
会場:The Third Gallery Aya
大阪市西区江戸堀1-8-24若狭ビル2F
TEL:06-6445-3557
URL:http://www.thethirdgalleryaya.com/

※アーティストトーク 
日時:2018年1月27日(土曜日)15:00〜16:30
参加費:1000円(税込・ワンドリンク付き)
定員:25人(要予約)
申込先:tamaki@thethirdgalleryaya.com/

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文=渡邊浩行/YAVAI-NIPPON

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