【写真展】ブローニュの森の娼婦、少数民族ロマ、ピカピカの都市…フランスの違和感を捉えた石川竜一最新作『OUTREMER/群青』が強烈すぎる!
『OUTREMER/群青』
■撮ることで見えてきた『社会システム』という怪物
―― 確かに、計画的に隙間なく整えられた新都市の巨大なビル群の写真とロマや娼婦、郊外の危ないエリアで撮った若者達の写真とのギャップは大きいですね。後者のほうにそれまでの石川さんに繋がる根のようなものを感じたのですが。
石川 自分もそこに気持ちが入ってしまうんですよね。そっちに共感したがる。
―― 社会的に搾取される側というか、同じ社会の構成員なのにその中心に入れないような人達に?
石川 そういう言いかたはしたくないし、本当はそうじゃないと思ってるんですけどね。別に搾取されているわけでもない。そこは自分の気持ち次第ですから。でも、実際に社会を見て考えるとそうも言っていられない。絶対的な社会っていうシステムがあって、そこに絶対的な中心っていうのがあるんだなって。フランスに行って、そういうのはめっちゃ感じました。
―― 具体的にどういうことですか?
石川 例えば、フランスでは移民を受け入れている。でも、移民が社会システムの中で機能する場所は下のほうじゃないですか。受け入れられたからといって元のフランスの人と全く一緒というわけではない。自分たちが譲りたくない部分を守りながら「その条件でよければあなたたちを受け入れますよ」っていうことですよね。「あんたらは外から来るんだからこっちの都合に合わせろよ」って。
―― 現実としてそういうことですね。
石川 それが当然っていう考えかたもあるかもしれない。「この土地は誰の物だ」って言われたらね。そういうことがフランスでわかってきたんですよ。革命のような歴史もありながら、そういうすごい社会システムをフランスは作ってきたわけで。
―― 以前TOCANAで『沖縄のことを教えてください』を撮った写真家の初沢亜利さんにインタビューしたさいに、初沢さんは「辺野古の基地移設問題は、海外では日本人による少数民族差別の問題として報道されている」と言っていました。日本の本土と沖縄との関係とフランスの社会システム、元のフランス人と移民達との関係を比べた場合、日本のほうがそのギャップは穏やかなような気がします。
石川 穏やかとはいっても日本でも確実にその力は働いていますよね。ここ数年は本当に感じます。今の政治の動きとかを見ているとすごい。でも、そう思うのは僕がそういうことを見てこなかったからで今に始まったことじゃない。外から来た人間として、フランスではそういうことを考えました。自分のフィールドならそんなことを考えなくても生きていけますから。でもね、そういうのも嫌なんですよ。「そういう中で生きています」って。だからと言って「社会なんてどうでもいいんだよ」って思うことそのものが社会システムにそう思わされて生かされているようにも思う。そういうのも嫌なんですよね。
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2024.10.02 20:00心霊【写真展】ブローニュの森の娼婦、少数民族ロマ、ピカピカの都市…フランスの違和感を捉えた石川竜一最新作『OUTREMER/群青』が強烈すぎる!のページです。写真集、渡邊浩行、写真家、石川竜一、写真展などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで