母の自殺、メンヘラ、心霊、寺の鐘…負の力を創作エネルギーに昇華する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」がヤバすぎる!

 「今年の最優秀、岡本太郎賞の受賞者は“さいあく”さんです」

 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)の授賞式で審査員長の椹木野衣氏の言葉に一瞬、会場内が戸惑った。“さいあく”さんとは、アーティストの「さいあくななちゃん」のこと、乙女チックな衣装が似合う女の子が壇上にのぼり、受賞の盾を受け取ると拍手が響いた。

「彼女は“さいあく”と罵られたことを逆手にとってその名を名乗り、創作を続けていこうと思ったそうです。さいあくを最高に転ずることも岡本太郎が提唱したことであり、負の力もまた新しい芸術創作のための大きな原動力になり得ます」と、椹木氏は評した。

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さいあくななちゃん《芸術はロックンロールだ》

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さいあくななちゃん《芸術はロックンロールだ》


 毎年恒例、TARO賞こと岡本太郎現代芸術賞展が開催中(クリックすると展示情報に飛びます)である(4月15日まで)。これは「芸術は爆発だ」という名言で知られる岡本太郎の精神を継ぎ、自由な視点と発想で現代社会に鋭いメッセージを突きつけるアーティストを発掘かつ応援しようと設立された公募展。1997年から始まり、今回で21回を迎え、応募総数558点のなかから、ずば抜けた26名(組)のアーティストが入選を果たしている。

 賞歴、学歴、年齢を問わず、美術ジャンルも超えて、応募できるところが特徴で、これまでも無名の若いアーティストが入選・入賞を果たすことでデビューをしており、若手作家の登竜門といえる。

「これまで“さいあく”といわれることがいっぱいあって、自由ってなんだよって思ってた。わたしは苦しいときも絵を描くし、生きているから絵を描くし、すごく息苦しいんですよ」と、さいあくななちゃんは投げやりに語る。

「でも、わたしはロックが大好きで、音楽がいつも自分を助けてくれた。ロックは現実に対する不満を歌っているのに、なんでそんな不満をそのまま言っちゃだめなんだろう。わたしはロックみたいに絵を描き続けたい」

 そんな彼女のお気に入りはエレファントカシマシという。少女マンガ風の作品だが、その表情にはどこか反抗的なところもみえる。

「わたしが描いている女の子は自画像じゃない。心の中にいて、わたしの言えないモヤモヤを代わりに言ってくれる。だから、毎日何枚も何枚も絵を描き続けている」

 今回の展示は、約5年間、一日も休まずに描き続けた作品を壁面に集約したもの。ピンクを基調に埋め尽くされた展示空間は、ネガティブなパワーが作り出す言い知れぬ磁場が働いている。

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