人類社会で“お父さん”はどうやって誕生したのか? なぜ一家の大黒柱的な位置づけに… 不倫男が居場所を失う理由も!
■人間関係における“相補性”が鍵に
仏・トゥールーズ経済学院、米・チャップマン大学などをはじめとする国際的な合同研究チームが2020年5月に「PNAS」で発表した研究では、家族を養うお父さんの出現は、人類社会の生態学的な変化に起因するものであることを報告している。生態学的な変化とはいったいどういうことなのか。
自分の遺伝子をなるべく多く後世に残すためには、確かに求愛と生殖行為で一生を終える“不届き者”のほうが有利に思えるが、人類の“故郷”であるアフリカ・サバンナの気候変動が大きく影響してくる。今から500万年前から800万年前の間に、それまでの豊かな草原から徐々に現在のような乾燥した気候に変貌を遂げはじめたことで、一帯の食糧資源が減少したのだ。これが太古の人類が直面した生態学的な変化だ。
この生態学的な変化によって、我々の祖先はより効率的な二足歩行を発達させ、食べる物の幅が広がって、より雑食になり、より巧妙な道具を開発して環境の変化に対応する総合的なサバイバル能力を高めたのである。そして人間関係においては相補性(complementarity)が鍵となるという。
お互いに補い合うという相補性は、男女のパートナー関係においては主に栄養素を補い合う関係になるという。オスは獣肉などのタンパク質と脂肪を供給することが求められ、メスはイモ類などの炭水化物をもっぱら確保することで、家族において栄養のバランスが保たれるのである。
そしてこの相補性はオス=オスの間でも有効活用される。それまでは単独で狩りをしていたオスたちが、食糧難に直面することでグループを組織して協同して大型哺乳類を仕留めるといったチームプレイに向かったのである。これにより食糧の確保が効率化されたのだ。
このようにオスの間でも協力関係が築かれることで、不倫ばかりしている不届き者たちが居場所を失いはじめ、かつてのアドバンテージを失うことになったのである。
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