米「ワープスピード作戦」、露「スプートニクV」…短期間で安全なワクチンはできるのか? ケロッピー前田が斬る!

 ワクチン開発が本格化した今年5月、ニュース専門チャンネルCNBCが放送したドキュメンタリーリポート「コロナウイルスのワクチン開発競争(The Race To Develop A Coronavirus Vaccine)」を見てみよう。

 リポートは、2020年1月、中国・上海の科学者が初めて新型コロナウイルスの遺伝子情報を公開したところから始まる。それをきっかけに世界中の製薬会社や研究所による開発競争が勃発する。

 特にアメリカは過去に例がないほどのスピードで対応し、一年か、一年半でワクチンを作ろうと勢いづいた。なぜなら、新型コロナウイルスは、2002年に感染拡大したSARSや2012年のMARSと同じ種類だったため、過去にワクチン開発のノウハウが活かせるものだった。

 とはいえ、流行性の感染症は一時的なもので、そのための研究費を確保することは難しい。そのため、アメリカ政府内には緊急時のワクチン開発をサポートする機関BARDA(アメリカ生物医学先端研究開発局)が発足していた。

 2020年1月、BARDAを統括するHHS(アメリカ合衆国保健福祉省)のアレックス・アザー長官は、新型コロナウイルスの感染拡大に敏速に対応し、フランスのSANOFI (サノフィ)社とアメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンを提携して、ワクチン開発に乗り出した。

 その研究のための資金集めに動いたのが、ビル・ゲイツが率いる「CEPI」(感染症流行対策イノベーション連合)であった。

 CEPIは、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年のダボス会議で発足した官民連携パートナーシップで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストの他、日本、ノルウェー、ドイツなどの各国政府も拠出していた。

 過去にワクチン開発の実績を持ち、好調なスタートを切ったのは、アメリカのモデルナ社だった。メッセンジャーRNAあるいはmRNAと呼ばれる新技術を持ち、研究を初めて42日間、2月28日にはワクチンが完成した。ただ、その安全性や有効性を確認する臨床試験ためには、最低でも約20ヶ月はかかる。

 一方、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、重症化の懸念がされる(D-activated versions of coronavirus)ワクチンに特化し、SANOFI社に変わって、中国のInovioと提携してスピードアップをはかった。それらのワクチン開発を安全面や実用面で監視監督しているのが、NIH(アメリカ国立アレルギー・感染症研究)のアンソニー・ファウチである。臨床試験の期間は、18カ月に短縮され、動物実験などは省き、人体への臨床を進めることで、ワクチンの実用化が急がれているという。

 10分足らずのドキュメンタリーだが、ワクチン開発において、アメリカ政府機関が国際的にも大きな決定権を持っていることがわかる。

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