「日本学術会議の任命拒否」批判するべきはそこじゃない! 本当の問題は●●だ! (東大教授・三浦俊彦)

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画像は「getty images」より

マイノリティの権利は重要→「マイノリティの希望通りにせよ」

戦争はいけない→「軍事技術に利用されうる研究は禁止せよ」

学者が任命拒否された→「学問の自由の侵害だ」

 このように、俗流リベラルの主張に共通するのは「短絡的」という特徴です。軍事研究は国を戦争に駆り立てる? いや、テロ対策や防疫や災害対策に必要な技術と不可分でしょう。当事者の希望をそのまま聞き届ければ当人が幸せになる? いや、薬物依存や自殺志願など多様な例から察しましょうよ。そういった総合的・俯瞰的な視野の広さこそ、いま日本社会に欠けており、とくに学者に欠けているのです。

 さてどうでしょう。菅政権による任命拒否に対する批判は……すべて論破されてしまったような? 任命拒否は正しかったのか? いや、私は最初に断定しました、「菅政権が悪い。任命拒否は暴挙だ」と。ではどこが悪いのか。

 もうおわかりですね。消去法ですから。テレビや新聞で盛んに叫ばれている批判のうち、ダメな論点をすべて潰しました。ただ一つ残っているあの点こそ、任命拒否が本当に批判されるべき理由です。さすがにもうはっきり言う必要はないでしょう[5]

 他ならぬそのことゆえにこそ、菅政権は致命的な誤りを犯したと言えます。本当に迷惑ですよね……。

[5] 念のためヒントを言っておきます。「まるでハル・ノートだ」。

文=三浦俊彦

1959年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部教授。専門は、美学・分析哲学。和洋女子大学名誉教授。著書に『バートランド・ラッセル 反核の論理学者:私は如何にして水爆を愛するのをやめたか』 (学芸みらい社、2019年)、『エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社、2018年)、『改訂版 可能世界の哲学――「存在」と「自己」を考える』(二見文庫、2017年)など。
Twitter:@tmiura_bot

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