「性自認」って何のこと? 論理思考を省いた「トランス支援」は当事者をバカにしている!(東京大学・三浦俊彦教授)

ハイパースカトロジスト(超糞便学者)としても知られる稀代の哲学者・三浦俊彦(東京大学教授)が、世の中の“ウンコな正論”を哲学的直観で分析する【超スカトロジスト時評】――

画像は「getty images」より

 「ハリー・ポッター」シリーズの原作者J.K. ローリングが、トランスジェンダーに対して差別的だとして批判されています。男女の区別は、生物学的な差異である――「womanは衣装ではない。男性の頭の中にある観念ideaでもない」[1]。そんなローリングの一連の発言が、映画でハリー・ポッター役を務めた俳優を含む多くの人々から非難されました。

 性別移行是認の風潮にローリングが異議を唱え始めたのは、性別違和により第二次性徴遮断薬を処方される子どもが激増中のイギリス[2]そして欧米の現状を憂えたからです。ところが興味深いことに、新型コロナ禍によるロックダウンが始まると、性別移行を中止する人の増加が報告されました[3]。家族と話す機会が増え、性別移行を賛美・推奨する教師や級友からの影響がなくなったからだと言われています。

三浦俊彦教授

 身体(染色体・生殖器)ではなく性自認で性別が決まる。法的IDも性自認に合わせるべきだ……欧米に追随して日本でもそのような語りがマスコミの標準になっています。その「性自認」が、学校から短期間離れて過ごしただけで変化する程度のものであるなら、その正体はいったい何なのでしょうか。法的性別の根拠にできるほど明確な概念なのか。性別移行の意味を理解するためには、「性自認」の意味について共通の理解を得ておかねばなりません。この肝心なことを論じないまま「トランス女性は女性です」と唱えられているマスコミや教育現場の現状は、嘆かわしい知的退廃と言うべきでしょう。

 現在の日本で、男性器を持った人が「私の性自認は女性である」と述べたとします。そこで表明された命題Sの意味は、Sの中に現われる〈女性〉が何を意味するかによって異なります。Sの解釈の候補として、4つ考えられるでしょう[4]

 S1:私は〈生物学的♀であるべき存在〉である。
 S2:私は〈生物学的♀の大多数が演じている性表現・性役割〉に属する。 
 S3:私は〈法的女性であるべき存在〉である。
 S4:私は〈「自分は女性」と強固に信じる状態〉にある。

[1]https://www.jkrowling.com/opinions/j-k-rowling-writes-about-her-reasons-for-speaking-out-on-sex-and-gender-issues/
[2] https://tocana.jp/2018/11/post_18912_entry.html
[3] https://uncommongroundmedia.com/detransition-during-lockdown-2/
[4] トランス問題は心と身体の関係に関わるので、心身問題(心の哲学)をモデルとして諸仮説を網羅する方法が理にかなっている。心身問題に置き換えると、S1~4はそれぞれ、同一説または機能主義、相互作用説、随伴現象説、並行説または観念論に相当する。

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