日本の医療崩壊を救うキーワードは「謎の床屋外科」!? 奇妙な歴史からみる医師不足の原因
ギルドが合併後も、床屋と外科医は全く別系統の教育を受けていました。そして、外科医は髪の毛切ったり髭剃ったりしちゃダメ、床屋は手術しちゃダメというルールが出来ましたが、持っている免許が同じなので床屋と外科医と歯科医のどれなのか区別がつかないという問題が発生しました。
つまり、組織が合体しても内部では外科部門と歯科部門と床屋部門に分裂したままだったのです。
3つとも書類上は同じ名前で出てくるので、後の時代に歴史文書を調べる歴史研究を混乱させる原因になりました。
同じようなことは他にもあって、昔は「アパシケリィ(Apothecaries)」も「ケミスト(Chemists)」も「ドラッゲスト(Druggists)」も全て薬売りでした。しかし、アパシケリィの派閥とケミスト&ドラッゲストの派閥が店を出す場所で揉めて、現代ではアパシケリィは医者(GPs)に、ケミストとドラッゲストは薬剤師(Pharmacists)になっています。
英国面は底なしに複雑怪奇です。
■賢王現れる
その後、国王ジョージ2世により1745年に外科医と床屋は別々のギルドに分離、1800年にロンドン王立外科医師会が設立され、1843年にイングランド王立外科医師会となった組織が現在も存続しています。
こうして外科医は床屋とは何の関係もなくなって、現代の医師と同じになりました。
王立外科医大学は床屋ギルドとの合併を恨んでいるようで、1368年発足を公式設定として1540年の床屋名誉組合は無かったことにしています。イングランド王立外科医師会も床屋が外科医だったことを否定しています。
昔の医者が自分で手術しないで指示書を書いて床屋に切らせたというのは完全にデマで、「内科じゃ治せないので紹介状書くから外科医に行って」と、現代でも普通にあることをやっていただけです。
しかし、この床屋と外科が合体した組織は廃止されず、2020年現在も700年以上の伝統を持つ組織としてロンドンにある床屋外科ホール(Barber-Surgeons Hall)という建物を拠点に活動しています。
現在はこの組織に入っても床屋にも外科医にもなれないのに慈善団体として存続しているのは、まさに英国面としか言いようがありません。
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2024.10.02 20:00心霊日本の医療崩壊を救うキーワードは「謎の床屋外科」!? 奇妙な歴史からみる医師不足の原因のページです。イギリス、医師、外科、床屋、ギルド、床屋外科などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで