猛毒キノコ御三家も発表! 「毒キノコ」を平気で食べる恐ロシアのキノコ料理&毒キノコの恐怖を亜留間次郎が徹底解説
■解毒原理
日本やカナダやアメリカには生えていませんが、テングタケ科のキノコであるセイヨウタマゴタケは、欧州からロシアでは帝王のキノコ、ロイヤルマッシュルーム、シーザーのキノコ(Цезарский гриб)と呼ばれ、食用に重宝されています。日本人にわかるように言えば、昆布と鰹節を山盛りした特濃出汁が出る欧州マツタケと呼べるキノコです。しかし、ドクツルタケやベニテングタケなどの毒キノコと同じテングタケ科に属しているので見分けが難しく間違えると危険な食べ物です。
シーザーのキノコは、ロシアの中でもクリミア半島より南の温かい地域や温かい時期の気温が20度ぐらいまで上昇する地方でしか育ちません。しかし、ベニテングタケはシベリアの寒冷地でも生えてきます。
ウクライナより西欧のキノコの毒性は低く、シベリアなど東北に行くほど植物相が毒キノコだらけになってくるため、寒い地方に行くほど食用が減って毒キノコが増える危険なことになり、その中から食用だけを選別して食べるのは至難の業です。おそらく、食べ物が少ない寒冷地のキノコほど捕食される淘汰圧が高くなって、毒キノコの生存率が高くなった進化によるものではないでしょうか?
テングタケ科は猛毒、弱い毒、無害な美味しい食用が属している科であるため、大変に取り扱いが難しいキノコです。猛毒で有名なベニテングタケは、麻痺毒であるムッシモールや遅効性の毒であるアマトキシンなども含まれているものの、イボテン酸など毒なのに強い旨味がある成分も豊富です。テングタケ科のキノコは、毒と旨味が同居する大変に危険な食べ物だけれど、毒抜きすれば食べられます。
テングタケ科の毒は水溶性の水に溶けだす種類の毒物なので、水で煮込むと煮汁に溶けだします。この性質を利用して毒抜きの煮込みを何度も繰り返すと毒が抜けて食べられるようになります。
しかし、毒と一緒に旨味成分のアミノ酸も抜けてしまう為に味は落ちます。
キノコは煮汁も一緒に食べるか、軽く焼いて食べると美味いのですが、毒も一緒になるので下手すると死にます。安全なキノコだけを選別して美味い料理を食べるか、無差別に毒も味も抜けるまで煮込んでから食べるかの究極の選択になります。
そんな意味でも、ロシアのキノコ料理は日本のフグ料理のような一面があります。
煮込んだだけでは不十分な毒キノコは、フグの卵巣を漬け込むように、塩漬けにして数カ月置くと毒が抜けて食べられるようになります。フグの毒であるテトロドトキシンがどんな調理でも無毒化できないと言われる理由は、肝臓の油に溶けているので煮込んでも水に溶けださないからです。毒が溶けている油を抜こうとすればタンパク質も一緒に溶けてしまうので、毒だけを抜くことは非常に困難です。ですが、長期間濃い塩漬けにするとフグの卵巣は無毒化されます。これはタンパク質やペプチドは濃い塩水に溶けださないけれど、水溶性分だけが溶け出す「塩析効果」によって、油から毒が抜けていくからです。
日本人がフグの卵巣を食べられるようにしてしまったのと同じ原理で、ロシア人も毒キノコを食べられるようにしてしまいました。まさにロシアのフグ料理なのです。
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2024.10.02 20:00心霊猛毒キノコ御三家も発表! 「毒キノコ」を平気で食べる恐ロシアのキノコ料理&毒キノコの恐怖を亜留間次郎が徹底解説のページです。ロシア、毒キノコ、食用などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで