東大出身の「オカルト新聞記者」が死にそうになった心霊体験(旧善波トンネル)

        東大生出身者が体験した恐怖の怪談46編を収録!!!!

3月発売の新刊『東大怪談 東大生が体験した本当に怖い話より抜粋

東大出身の「オカルト新聞記者」が死にそうになった心霊体験(旧善波トンネル)の画像1
『東大怪談 東大生が体験した本当に怖い話』(豊島圭介・著/サイゾー)

「オカルト新聞記者」吉澤塁の体験談
2010年文科Ⅲ類入学 30代男性

 僕は一浪して東大に入りました。文科三類入学なので、もともと文学部系に進学するのが普通なのですが、理系に転向して工学部の都市工学科に進みました。民俗学好きが高じて、人間とオバケが共存する「幽霊都市」というのを作る研究を始めたんです。ちょうど心霊スポット巡りにハマっていた時期でもあって、心霊と土地の関係性で何か考えられないかと思ったというのもありました。でも、構造力学やコンクリートの計算が難しすぎてついていけなくなり、文系に戻って研究テーマを「天狗」に変更し、卒論もそれで書くことになったんです。

 この頃、一緒に心霊スポット巡りをするTという仲間がいたんです。彼は高校の同級生で当時は早稲田の学生でした。大学五年目だった冬に、そのTと一緒に神奈川県の心霊名所「旧善波トンネル」に行こうということになりました。

 「旧善波トンネル」は、そこで「準一くん」という少年がバイク事故で亡くなって以来、「じゅんいち」という名前の男性が次々と事故を起こしているという噂のある場所で、トンネルの前に謎の地蔵が設置されていたり、「もう死なないで準一」という不気味な看板が立てられていることでも有名でした。

 心霊スポットには数多く行きましたけど、実際に幽霊を見たり霊障に遭ったりということはほとんどないんです。その日も、夜の十時くらいに現場に着くと特に何事もなく一通り見終わって、「じゃあ、はなまるうどんでも食って帰るか」という流れになりました。

 Tの運転する車の助手席に僕はいました。深夜の国道はすれ違う車も同じ方向に向かう車もほとんどありません。街灯や時折通過するガソリンスタンドやコンビニの灯りがあるくらいでほとんど真っ暗な一本道を僕とTは東京に向かいました。

 実は、現場を出てからずっと奇妙な音が聞こえていたんです。でも、空耳かもしれないなと思いTには黙っていました。Tはまっすぐ前を見て、僕との雑談に応じています。何かが聞こえている様子はありません。三十分ほどそんな時間が続きましたが、ふと会話が途絶え、不自然な沈黙が車中を支配しました。

 例の音はまだ聞こえています。僕は耐え切れなくなってTに聞きました。
「ねえ、バイクの音、聞こえない?」
 するとTは、
「うん、ずっと聞こえてる」
 やはり、Tにも聞こえていたんだ。
 僕たちに聞こえていたのは、何十台ものバイクがまるで暴走族のように隊列を組んで、

ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!! ぼーーーん!

 と爆音を上げて走る音だったんです。

 僕たちは、前も後ろもはっきり見渡せる一本道の街道を走ってきました。すれ違ったり追い越したりするバイクは一台もありません。バイクらしきライトの光すら見た記憶がなく、側道もない。遠くのバイクの音が反響するような山なども一切ないんです。

 この時、僕もTも怖くて言葉にはできませんでしたが、脳裏にあったのは「旧善波トンネル」のことだけでした。僕たちは、大勢の人がバイク事故を起こしているという噂の場所に行ってきたのです。そして、その帰り道ずっと見えないバイクの集団に囲まれて走っている。
 何かを連れてきちゃった……。そう思いました。

 事故るかもしれない……という不安で車内の空気はどんより重くなり、怖さを何かでごまかさないと頭がおかしくなりそうな状態です。仕方ないので、相対性理論の「LOVEずっきゅん」とか細川たかしの「北酒場」を爆音で流し、熱唱しました。それでもずっと耳元では「ぼぼぼぼぼぼ」と大量のバイクの音は鳴り続けます。僕たちの緊張はピークを迎えていました。

 東京に入り、街の光が見える大きな交差点を過ぎた時、なぜか音はピタリと止まりました。それ以降、いくら耳を澄ませても聞こえることはありませんでした。

 本記事は3月発売の新刊『東大怪談 東大生が体験した本当に怖い話より抜粋しました


【本の内容】

東大出身の「オカルト新聞記者」が死にそうになった心霊体験(旧善波トンネル)の画像2
『東大怪談 東大生が体験した本当に怖い話』(サイゾー)

日本の最高頭脳である東京大学出身者11人が体験した怖い話。怪談を中心に、ヒトコワ、精神疾患、都市伝説、パラレルワールド、UFO、宇宙人など様々なジャンルのオカルト体験をまとめています。偏差値75の論理的思考をもつ東大生の頭脳でも説明がつかない怪異とはなんなのか?
あらゆる現実的な可能性を排除した上で残る“本当に説明不可能”な現象は存在するのか?
果たしてこの世に幽霊は存在するのか? 
映画『三島由紀夫vs東大全共闘 ~50年目の真実~』、ドラマ「怪談新耳袋シリーズ」の監督であり、自身も東大出身の豊島圭介が怪異の本質に迫ります。各エピソードに、東大ポイントや東大アンケートも盛り込むことで話者の人間性や視点にも触れ、どのような角度から語られた怪奇現象だったのか、読者とともに考察できる作りになっています。

 


【目次】

・東大病院で怪異に遭遇した男
・牛人間に呪われた男
・汚部屋育ちの東大生
・オカルト新聞記者
・精霊に愛された女
・東大中退の男
・救世主になった男
・時空の隙間に落ちた男
・細胞生物に乗っ取られたコンサル
・パラレルワールドに行った官僚
・トラウマプロデューサー
・おわりに

【著者】豊島圭介

東大出身の「オカルト新聞記者」が死にそうになった心霊体験(旧善波トンネル)の画像3映画監督。東京大学教養学部表象文化論専攻卒業。『怪談新耳袋』(2003年)で監督デビューし、アイドル、ホラー、恋愛もの、コメディとジャンルを横断した映画・ドラマに携わる。2020年公開の『三島由紀夫vs東大全共闘 ~50年目の真実~』で初のドキュメンタリーの監督を務める。代表作に、映画『ソフトボーイ』『花宵道中』『森山中教習所』、『ヒーローマニア -生活-』『妖怪シェアハウス ~恋しちゃったん怪~』(2022)など。ドラマ「怪奇大家族」、「マジすか学園」シリーズ、「CLAMPドラマ ホリック xxxHolic」、「Is” アイズ」、「イタイケに恋して」など。近作にドラマ「書けないッ!? ~吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(2020)、「妖怪シェアハウス」シリーズ(2020ー2022)等がある。

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