動く物体しか見えなくなる「リドック症候群」の謎! 患者が生きる“とても奇妙な世界”とは?
2022.06.06 11:30
ミレーナさんの脳の分析画像。画像は「Daily Mail」より引用
ミレーナさんの脳の構造や動きを詳しく検査したところ、後頭部あたりにりんご大ほどの脳組織の欠損が認められた。研究者らは彼女の視覚システムは全体がシャットダウンしているのではなく、失った部分を迂回するように再配線が行われ、そのために一部分だけ視覚が機能しているのだと結論づけた。
論文は今年5月に学術誌「Neuropsychologia」に掲載された。またミレーナさんが転がるボールをキャッチする様子などを写した動画も公開された。彼女は動くボールの大きさやスピード、方向を認識できる一方、色については不明瞭で、目の前にいる人が親指を上げているか、いないかを判別することはできない。
ミレーナさんは自分が見ているものを本当に奇妙だと語っているという。だが彼女の非常にレアな経験は、視覚機能の回復について究明する上でも、人間の視覚や認知機能を解明する上でも大いに役立つだろう。
脳とはなんと驚異に満ちた器官なのか。ミレーナさんの事例はそのことを我々に改めて教えてくれる。
参考:「Science Alert」、「Neuropsychologia」、「Daily Mail」、ほか
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