1人の中の2つの人格が「互いの存在を完全に知らない」と何が起こる? アンセル・ボーンの事例が凄すぎる!
自分が自分であるとはいったいどういうことなのか――。普段の生活では意識することのない「自己同一性」について考えさせてくれる奇妙なケースがある。
■無神論者が病気をきっかけに敬虔な牧師に
米ロードアイランド州で暮らす大工、アンセル・ボーンは目立たず気取らない男であったが、徹底した無神論者であった。教会はもちろん、教会の近くに行くことさえ拒み、地元の牧師たちを毛嫌いしていた。アンセルの言動に問題はなく、むしろ気さくな男であったが、彼の宗教嫌いだけは周囲にも知れ渡っていた。
1857年8月某日、任された屋敷の建築に勤しんでいたアンセルだったが、仕事中に突然体調を崩し、病院に運ばれることなった。しかし、不可解なことに医者は彼の身体的な異常を見つけることができず、アンセルはその後数週間の自宅療養を余儀なくされる。
10月28日、まだ仕事に復帰できず自宅の周囲をたどたどしい足取りで散歩していたアンセルは、本人も驚いたことに、地域の教会に行きたいという圧倒的な衝動に駆られたのだ。しかし無神論者であった彼は、この衝動を何度も打ち消そうと頭を振って衝動を抑え込んだ。
「教会に行くくらいなら、永遠に聾唖者になりたい」とアンセルを独り言をつぶやき、この直後に彼は倒れた。路上に伏しているアンセルを見つけた近所の友人たちが彼を自宅に運んだのだが、アンセルは目も見えず話すこともできず、耳も聞こえていない様子であったという。
翌朝、アンセルの視力は戻ったが、まだ聞くことも話すこともできず、書面によるメッセージで妻とやりとりするしかなかった。倒れる前につぶやいたことで、神から罰せられたのだと考えたアンセルはついに教会を訪れて罪を懺悔したのだった。そして、あれほど嫌っていた牧師にも会い「神を賛美するために生きることを決意しました」と決意を表明したのだ。
この後、彼は教会の礼拝に定期的に出席するようになり、説教の後に書面によるメッセージで神を敬った。この神への賛美によってか、アンセルは聴力と発話を取り戻したのだった。その数日後、アンセルは神が目の前に現れたと主張し「あなたの世俗的な仕事を片付けて、私のために働きなさい」と命じられたという。そしてそれから間もなくアンセルは牧師になり、信仰の道に生きることになったのだ。
まるで別人になったかのようなアンセルの変りぶりに家族をはじめ周囲は驚愕したのだが、その後30年間にわたって、アンセルは神のために働き続け、慈悲深い態度と揺るぎない信仰で尊敬を集める存在となった。
コミュニティの宗教的支柱となっていたアンセルだったが、1887年1月のある日、不可解なことに跡形もなく姿を消した。前触れもなければ足取りの痕跡もなく、警察の捜索もまったくの梨の礫で、まるで彼が空中に消えたかのようであった。
■見知らぬアパートの部屋で目覚めると……
アンセルの失踪から2カ月後の3月15日、午前5時頃のこと。米ペンシルベニア州ノリスタウンでアルフレッド ・ブラウンという名前の謙虚な文具店経営者が眠っていたところ、突然銃声のような大きな音がして飛び起きた。しかし目覚めた彼は、知らないアパートの部屋の、見たこともないベッドの上にいることに気づく。
彼は周りを見回したが、自分がどこにいるのか、なぜここにいるのか理解できなかった。よろめきながらアパートの部屋を出ると、見知らぬ人から「おはよう、ブラウンさん」と挨拶された。それを聞いた彼は困惑し、「自分はそんな名前で呼ばれる筋合いはない。私はロードアイランド州のアンセル・ボーンだ」と語った。
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2024.10.02 20:00心霊1人の中の2つの人格が「互いの存在を完全に知らない」と何が起こる? アンセル・ボーンの事例が凄すぎる! のページです。多重人格、アイデンティティ、自己同一性、記憶喪失、解離性遁走などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで