ナチスのUFO開発史ールーマニアの発明家アンリ・コアンダ(1)

――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀り。アーノルド事件からCBA事件までを振り返る。

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画像は「Getty Images」より

第1回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(1) 
第2回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(2)
第3回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(1)
第4回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(2)
第5回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(1)
第6回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(2)
第7回:戦前に設計された円盤形航空機「ディスコプター」とは?
第8回:UFO=宇宙人の乗り物説は日本発祥だった!?
第9回:UFO研究の先駆者ドナルド・キーホー概説
第10回:1897年「オーロラ事件」は世界初のUFO墜落事件なのか?
第11回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(1)
第12回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(2)
第13回:昭和25年の「空とぶ円盤」事情

 1950年は、UFO研究におけるもう一つの学説、UFOはナチス・ドイツの秘密兵器だという説が具体的に形をとるようになった年でもある。

 ナチスの秘密兵器説に関して言えば、これには現在2つの系統がある。

 ひとつは、ナチス時代のドイツで円盤形航空機を作っていたと戦後名乗り出た、自称技術者たちの告白に始まるもので、この系統のUFOは当時の科学技術の延長線上にある円盤形航空機である。推進装置もプロペラやジェット、ロケット推進を使用しており、性能はともかくとして技術的には当時も製作可能なものであった。

 もう一つは1990年前後から登場したものであり、UFOはナチス・ドイツが地球外生命体などと接触して得た、現代の科学技術さえ及ばないスーパーテクノロジーによって製作されたものと主張する。現在主流になっているハウネブやベル型のディー・グロッケなどはこちらの系統に属する。

 じつは、UFOの正体はナチス・ドイツの秘密兵器であるという噂は、ケネス・アーノルド事件直後から存在したようだ。

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アドルフ・ヒトラー(画像は「Getty Images」より)

 1947年末には、スペインのフランコ総統がかくまっている3人のドイツ人技師が開発したKM2というロケット弾だという報道が日本でも見られたが、噂の出所は筆者としても確認し得てない。しかしフィクションの世界では、アメリカのロバート・A・ハインラインが1947年に発表した少年向けSF小説『宇宙船ガリレオ号』で、ナチスの残党が月に秘密基地を作っているという設定が登場するから、UFOが何らかの秘密兵器であり、アメリカのものでもソ連のものでもないとするとナチスによるもの、という発想が生まれる素地はあったのかもしれない。

 実際、ヘルマン・オーベルト(1894~1989)やヴェルナー・フォン・ブラウン(1912~1977)のように、戦後ペーパークリップ作戦という秘密のオペレーションを通じてアメリカに移住したナチスの科学者は大勢いるし、他にもスペイン、南米、エジプトなどに逃れた者たちもいた。

 さらにナチス政権下のドイツでは、何種類かの円盤形航空機の製作が試みられていたことも事実だ。

 その最初のものが、ルーマニア人航空技師アンリ・コアンダ(1886~1972)が設計した円盤形航空機である。

 アンリ・コアンダは、1886年にルーマニアの首都ブカレストに生まれた。父コンスタンチン・コアンダ将軍が彼を軍人にしたいと望んだため、ヤシの軍学校やブカレストの火器・軍事・海軍工学学校に学び、さらに1904年にはドイツのベルリンにあるシャルロッテンブルク工科大学(現在のベルリン工科大学)で火器について学んだが、この頃から飛行機に関心を持つようになった。

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アンリ・コアンダ(画像は「Wikipedia」より)

 1908年にルーマニアに戻ると、一時軍務に就いたが、すぐに除隊してパリに行き、新設された国立航空宇宙大学院大学に入学した。そして翌年には、世界最初のジェット機とされるコアンダ-1910を製作する。パリでの第二回国際航空工学展覧会で展示されたこの飛行機は、実演の際壊れてしまったが、その原因を究明する過程でコアンダ効果と呼ばれる現象を発見する。

 コアンダ効果とは、ジェットエンジンから噴射された噴流がスプーンの裏面のように丸くなった表面に当たると、それをつたうように流れるという現象である。つまり、本来まっすぐ進むはずの噴射が、この現象を利用すると曲線を描いて動くよう誘導できるのだ。

 1935年、彼はこのコアンダ効果を利用し、お椀のような形をした機体の全周にいくつものジェットエンジンを取り付け、機体の表面を伝わせて下方に推進力を向けるという方式の円盤形飛行機を提案した。しかし彼のこの発明は、当時あまり関心を惹かなかった。

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コアンダ-1910(画像は「Wikipedia」より)

 この円盤形航空機に興味を示したのが、1940年にパリを占領したナチス・ドイツであった。

 SS(ナチス親衛隊)は彼を採用し、円盤形飛行機の設計を命じた。コアンダが設計したのは、上部に12機のジェットエンジンが放射状に配置された、直径20mの巨大な円盤だった。

 この航空機については縮尺模型による風洞実験まで行われたが、結局エンジンの数が多く、従って多量の燃料を消費するということで正式採用に至らなかった。

 これとは別に、ザックAS-6という円盤形飛行機も開発されていた。

 これはアルトゥール・ザック(1900~1964)という人物が設計した円盤翼機で、1944年には試験飛行も行われたが、円盤形の主翼では安定した飛行ができず、失敗に終わった。

 他にもBMWが円盤型航空機を作成しようとしてたという噂があるほか、戦後になってアンドレアス・エップ(1914~1997)という人物が、1943年にオメガ・ディスクという円盤形航空機を開発したと述べている。

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文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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