ペット向け「キンタマビジネス」で巨万の富を得た男が激ヤバ! 愛犬の失踪事件がもたらした奇跡のアイデアとは?
■200億円を売り上げ、キンタマ御殿を建てる
ミラー氏によれば、販売開始からの20年間で、世界50か国に50万ペアのNeuticlesを販売したという。単価は1ペアで94ドル(XXSサイズ)から599ドル(精巣上体付きXXLサイズ)。その中間の350ドルで概算すると、350ドル×50万セットで1億7,500万ドル。1ドル110円で換算して、日本円で192億5,000万円を売り上げたことになる。
現在は犬向けだけでなく、猫、馬、牛といった、他の動物を対象にした製品も展開。動物園の象のための特大品も納品した。関連商品はストレスボールやフリスビーなどのグッズに及び、さらにはペット用品の範疇をはみ出し、Tシャツやトートバッグ、イヤリングなどのファッションアイテムにまで広がっている。
2005年にはあのイグノーベル賞を受賞した。
Neuticlesで稼ぎ出した財産で、ミラー氏はミズーリ州インデペンデンスに新居を構えた。ラスベガスから取り寄せたスロットマシンを擁するこの邸宅のことを、ミラー氏は「Neuticle Built House」と呼んでいる。
■医学的な効用はあるのか
ペット向け疑似睾丸インプラントという画期的な製品が世のペット愛好家に支持されていることは、Neuticlesの成功が如実に表している。
しかしながら、1つの疑問が残る。去勢後にインプラントを入れた場合と入れない場合で、ペットの行動に明らかな差は現れるものなのだろうか?
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の調査に、この問いに対する1つの答えがある。
米紙「ハフィントンポスト」(2013年4月25日付)の記事によると、NIHでは、オスのアカゲザルを対象に、去勢後に睾丸インプラントを入れた一群と、去勢をしていない一群の行動を比較した実験を行った。その結果、去勢していない一群には支配的な行動が増え、従属的な行動が減る傾向が見られた。この変化は最終的に群れの中でのヒエラルキーにおける序列に関係を及ぼしたという。
つまり、去勢から生じるホルモン分泌等の変化によるアカゲザルの行動への影響は見られても、疑似睾丸インプラントを入れ、外見を復元したことによる影響は特には見られなかったということだ。
しかし、ミラーさんはそうは考えていない。去勢した状態のままのペットのオーナーと、インプラント手術を施したペットのオーナーからの直接の聞き取りから、疑似睾丸インプラントには愛犬の行動を去勢前とさほど変わらぬ状態に保つ、心理的な効果があると確信しているからだ。
「犬も喪失感を覚える。睾丸を舐める習性があるため、疑似睾丸を入れてあげれば、去勢された犬は喪失感を味わわずにすむ」
AFPの取材に対して、ミラーさんはそう答えている。
■ペットの美容整形は虐待なのか、愛なのか
美容整形が盛んなアメリカでは、ペットもその例に漏れない。実際にタトゥーやピアス、脂肪除去、フェイスリフトのような苦痛を伴う手術も行われている。ペットにとっては行き過ぎた行為とも思える。
そんな「ハリウッド的なケア」が行われている風潮を「新手の動物虐待」だとして、ニューヨーク州議会のニコル・マリオタキ議員は、ペットの美容整形を禁止する法案を議会に提出した。
疑似睾丸インプラント手術に対しても、誰もが肯定的に捉えているわけではない。カリフォルニア州の動物愛護団体「GlobalAnimal」のタジ・フィリップス氏のように、「疑似睾丸インプラントは行き過ぎたペットの擬人化で馬鹿げている」と主張する人もいる。
その一方で、「ペットへの美容整形は虐待ではなく、愛情表現の1つ」だと主張する推進派も存在する。自身の愛犬に疑似睾丸インプラント手術を施したメリーランド州の獣医、フラビア・デルマストロ医師のように、「疑似睾丸インプラントには、去勢手術によって失われた重みを補う癒し効果がある」と主張する専門家さえもいるのだ。
本当の所は当事者であるペット自身にしかわからない。ミラーさんを成功者へと導いた疑似睾丸インプラントは飼い主のエゴなのか、愛するペットにとっての福音なのか? 動物語を翻訳する機器が開発されるまで決着することはなそうだ。
■それでも「キンタマ」で行こう!
一握りの愚か者たちが時代を変えてきたことは、歴史が証明している。
「Stay Hungry. Stay Foolish.」(ハングリーであれ。愚か者であれ。)
2005年、スタンフォード大学の卒業式の講演でアップルの創始者、スティーブ・ジョブスが語った有名なフレーズだ。
先んずること1年。2004年にミラーさんが出版した本のタイトルは
『Going Going Nuts!』
「思い切りやろう!」という意味合いの慣用句だが、Nutsは「気狂い」「キンタマ」のスラングでもある。
世間の常識などどこ吹く風。ミラーさんはこれからもきっと己の「キンタマ道」を突き進むに違いない。
参考:「CNBC」、「Oddity Central」、「Neuticles」、ほか
※当記事は2018年の記事を再掲しています。
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