ツタンカーメン王墓に“崩壊の危機”? ― ギリシャの科学者が警告、エジプト政府は「完全なデマ」と真っ向から対立

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 3000年以上の時を超え、奇跡的にほぼ完全な姿で発見された古代エジプトの至宝、ツタンカーメン王の墓。その黄金のマスクは、今もなお世界中の人々を魅了し続けている。しかし、この人類の宝が、今、「崩壊の危機」に瀕しているという衝撃的な研究結果が発表された。ギリシャの科学者が「鉄砲水と脆弱な岩盤によって、墓は崩壊寸前だ」と警告する一方、エジプト政府は「全く根拠のないデマだ」と、その主張を真っ向から否定。一体、どちらの主張が真実なのだろうか。

脆弱な岩盤と、天井を走る“断層”―科学者が指摘する3つのリスク

 ギリシャ・アリストテレス大学の研究者、サイード・ヘメダ氏が発表した研究は、衝撃的な内容だった。彼は、ツタンカーメン王墓とその周辺の岩盤をデジタルで再現し、最新の地盤工学的な分析を行った。その結果、墓が抱える3つの深刻なリスクが浮かび上がったという。

第一のリスク「岩盤そのものの脆弱性」

 墓が掘られている「エスナ頁岩層」と呼ばれる地層は、泥や粘土が固まってできた、極めて脆い岩盤だという。この頁岩は、水を含むと膨張し、乾くと収縮する性質を持つため、岩盤全体に亀裂を生じさせやすい。

第二のリスク「鉄砲水」

 王家の谷では、周期的に大規模な鉄砲水が発生する。特に1994年の壊滅的な洪水では、大量の水と湿気が墓の内部に流れ込んだ。これが、脆弱な岩盤をさらに脆くしているとヘメダ氏は指摘する。

第三のリスク、「墓を貫通する断層」

 墓の前室と玄室(埋葬室)の天井には、肉眼でも確認できるほどの大きな断層が走っている。この断層が、鉄砲水が発生した際の“水の通り道”となり、墓の深部まで水を浸透させ、岩盤の強度を著しく低下させているというのだ。研究によれば、水で飽和した状態の岩盤の強度は、乾燥状態に比べて著しく低いことが実験で確認されている。

 ヘメダ氏は、墓の天井に見られる剥離や亀裂は、これらの複合的な要因によって引き起こされたものであり、墓が崩壊する危険性が高まっていると結論づけている。

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2012年撮影の王家の谷中央部。中央右にはKV62(ツタンカーメンの墓)への屋根付きの入口が見える。 By Kingtut at Hungarian Wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link

「100年間、何も変わっていない」―エジプト政府の猛反論

 この衝撃的な研究結果に対し、エジプト考古最高評議会(SCA)は、即座に、そして極めて強い言葉で反論した。

 SCAの事務総長は、「亀裂や湿気、壁画の劣化といった主張は全く根拠がない」と断言。「墓は驚くべき保存状態にあり、構造的な完全性にも、鮮やかな壁画にも、何ら危険はない」と述べたのだ。

 彼によれば、墓の壁に見られる亀裂は、1922年の発見当時から存在するもので、「過去100年間、何の変化も見られない」という。SCAは、長年のパートナーであるゲティ保存研究所による定期的なモニタリング結果を根拠に、ヘメダ氏の研究を「時代遅れのデータや誤った仮定に基づいている」と、その信頼性自体を攻撃した。

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どちらが真実か―予測モデル vs 現地調査

 なぜ、これほどまでに見解が食い違うのか。その鍵は両者のアプローチの違いにある。

 ヘメダ氏の研究は、3Dモデルを用いた「予測シミュレーション」だ。これは、最悪のシナリオ(例えば再び大規模な鉄砲水が発生した場合)に、墓がどうなるかを予測するものだ。

 一方、エジプト政府が根拠とするのは、ゲティ保存研究所による「現地での継続的なモニタリング」だ。こちらは、あくまで“現状”の安全性を証明するものであり、未来のリスクを予測するものではない。

 ツタンカーメン王墓は、エジプトにとって年間数十億ドルをもたらす観光産業のまさに中心であり、国家の威信そのものだ。その安定性に対するいかなる疑念も、彼らにとっては看過できない問題なのだ。

 科学的な論争が繰り広げられる中、少年王の黄金の墓は、発見から100年以上が経った今もなお、沈黙を守っている。果たして、3000年の眠りを守ってきたこの聖域は本当に安泰なのだろうか。それとも、我々の知らないところで、静かに崩壊へのカウントダウンが始まっているのだろうか。

参考:ZME Science、ほか

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