カエルの心臓を“念力”で止めた女 ― 米ソ冷戦下で繰り広げられた“超能力スパイ戦争”と、ソ連が生んだ最強のサイキック兵器「ニーナ・クラギーナ」

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 米ソが核のボタンに指をかけ、世界が冷戦の恐怖に凍りついていた時代。その水面下で、もう一つの信じがたい軍拡競争が繰り広げられていた。それは、人間の潜在能力を兵器として利用しようとする、「超能力開発競争」だ。

 その中心にいたのが、ソ連の一人の主婦、ニーナ・クラギーナ。彼女は、物体を触れずに動かし、ついには念力だけで生物の心臓を止めたとされる、驚異のサイコキネシス(念動力)能力者だった。これは真実か、それとも国家が生んだ壮大なプロパガンダか。米CIAの極秘文書にも記録された、彼女の恐るべき力の正体に迫る。

怒りで目覚めた“力”―平凡な主婦から超能力者へ

 ニーナ・クラギーナは、1926年、サンクトペテルブルク(旧レニングラード)に生まれた。14歳で赤軍に入隊し、第二次世界大戦でナチスと戦った経歴を持つ。戦後は結婚し、子供を育てる平凡な主婦として暮らしていた。しかしある日、彼女の日常は一変する。

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 激しい怒りに襲われた時、彼女の周りにある物がひとりでに動き出すことに気づいたのだ。当初はポルターガイスト現象だと思っていたが、やがてその動きが自身の強い感情と連動していることを悟る。

 彼女は、この未知なる力のコントロールを試み始めた。最初はマッチ棒のような軽いものしか動かせなかったが、訓練を重ねるうちに、より重い物体を自在に操れるようになった。さらには、目隠しをしたまま物の色を識別したり、他人のポケットの中身を透視したりといった、他の超能力にも目覚めていったという。

科学者も戦慄…カエルの心臓を止めた“公開実験”

 彼女の噂はすぐにソ連当局の知るところとなり、その能力の真偽を確かめるため、国家を挙げた大規模な科学的検証が始まった。ノーベル賞受賞者2名を含む40人ものトップ科学者たちが集められ、厳格な監視体制の下で数々の実験が行われた。

 そして、科学者たちは目の前で繰り広げられる信じがたい光景に、ただ驚愕するしかなかった。

・手を触れずに物体を動かし、回転させる。
・割れた卵の殻を、元の状態に復元する。
・未現像のフィルムに、念だけで画像を焼き付ける。
・他人の心臓の鼓動を、意のままに操る。

 中でも最も衝撃的だったのが、1970年3月10日に行われた実験だ。クラギナは、容器に入れられたカエルの心臓に意識を集中させ、わずか7分で、その鼓動を完全に停止させたのだ。この時、彼女自身の心拍数は危険なレベルまで劇的に上昇していたという。

 さらに、実験に懐疑的だったある医師の心臓に意識を向け、その心拍数を急上昇させることにも成功。実験は、医師の命に危険が及ぶと判断され、わずか5分で中止された。

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米ソ超能力戦争―CIA秘密計画「スターゲイト」

 クラギナの存在は、鉄のカーテンを越え、アメリカの情報機関にも伝わっていた。唯物論を掲げ、神秘主義を「大衆のアヘン」として否定していたはずのソ連が、本気で超能力を兵器利用しようとしている。この事実に衝撃を受けたペンタゴンは、対抗策として、ある極秘プログラムを開始した。それが、後に映画『ヤギと男と壁と』のモデルにもなった、CIAの「スターゲイト計画」である。

 ソ連は、「テレパシー」を「長距離生体システム伝達」、「サイコキネシス」を「人間からの非電離性電磁放射」などと科学的な用語に言い換え、国家プロジェクトとして研究を進めた。対するアメリカは、特に「リモートビューイング(遠隔透視)」能力の開発に注力。ソ連の軍事基地などを、その座標だけで“透視”しようと試みた。

 米ソの対立は、核開発競争だけでなく、人間の精神そのものを戦場とする、前代未聞の「超能力スパイ戦争」へと突入していたのだ。

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英雄か、詐欺師か―謎に包まれた最期

 もちろん、クラギナの能力に対しては、当初から懐疑的な声も多かった。新聞に「詐欺師だ」と告発された彼女は、名誉毀損で訴訟を起こし、一部勝訴している。

 晩年、彼女の力は衰え始め、健康状態も悪化。度重なる実験による精神的・肉体的な消耗が原因だったとも言われている。彼女は心臓発作でこの世を去ったが、その死さえも、超能力を使った代償だったのではないかと囁かれた。

 ソ連政府は、彼女を「レニングラードの英雄」として称えた。しかし、彼女が本当に超人的な力を持っていたのか、それとも冷戦が生んだ壮大なプロパガンダの駒だったのか、その真実は彼女の死と共に永遠の謎となった。

 ただ一つ確かなのは、米ソという二つの大国が、人間の未知なる力を本気で信じ、それを巡って熾烈な情報戦を繰り広げていたという、驚くべき歴史の事実である。

参考:Howandwhys、ほか

TOCANA編集部

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