スマホは本当に「聞いていない」のか? 周囲が中国語を話していただけで表示された中国語講座の広告【実体験】

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 話した内容が、そのまま広告に出てきた——。そんな経験をしたことはないだろうか。

 成田空港行きのバスで中国語が飛び交う中、Instagramに表示されたのは中国語学習講座の広告だった。

 スマホは、本当に「聞いていない」のだろうか。

成田空港行きバスで起きた、あまりにも出来すぎた一致

 先日、見送りのために成田空港へ向かうバスに乗ることがあった。車内は中国人観光客の集団で埋まっており、大声で交わされる中国語が車内に響く、最近では珍しくもない光景だ。席に座り、何気なくInstagramを開いた瞬間、表示されたのは中国語学習講座の広告だった。

 私はこれまで中国語を勉強しようと考えたことはない。関連する検索履歴もなければ、学習アプリを入れた覚えもない。中国語圏の動画や記事も閲覧していない。中華街に足を運んだ記憶すらここ数年はなく、最近訪れたのは新宿の中華料理屋くらいのものだ。にもかかわらず、この状況で表示された広告は、偶然にしてはあまりに出来すぎていた。

 この種の体験を語る人は少なくない。「会話した直後に、その内容の広告が出た」「外国語が飛び交う場所にいただけで、その言語の広告が表示された」。この種の体験は、SNSなどで語られることがあり、同様の違和感を覚えた人が一定数いることは確かなようだ。

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公式否定の根拠と、検証されていない技術的余地

 もちろん、企業側は一貫して否定している。Meta(Instagramの運営元)は「広告目的でマイクを使って会話を盗聴することはない」と明言しており、公式ポリシーでもマイク使用はユーザーが許可した場合に限られるとしている。

 だが、この否定には決定的に欠けているものがある。それは第三者による検証結果だ。

「聞いていない」という主張の根拠は、あくまで企業自身の説明に依存している。外部監査や独立機関による「完全に聞いていないことの証明」が提示された例は、ほとんど存在しない。

 技術的に見ても、「会話を広告に使うこと」が不可能とは言い切れない。常時録音のような乱暴な方法でなくとも、短時間の音声解析や、特定アプリ起動時のマイク利用で、言語や話題を大まかに判別することは十分に可能だ。実際、音声認識や言語検出の技術はすでにスマートフォン上で実用レベルに達している。

 2024年には、広告会社Cox Media Groupの内部資料流出により「Active Listening(能動的傾聴)」という広告手法が話題になった。MetaやGoogleは関与を否定しているが、「会話データを広告最適化に使う発想そのもの」は、すでに業界内で検討されていたことになる。

 位置情報や行動履歴だけで説明できる、という見方もある。しかし今回のように「その場で飛び交っていた言語」と広告内容が一致するケースが繰り返されると、単なる偶然や心理効果だけで片付けるのは難しい。

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 確かに、「聞いている」と断定できる決定的証拠はない。だが同時に、「絶対に聞いていない」と言い切れる証拠も存在しない。あるのは、企業の否定と、無数の不気味な一致だけだ。

 スマートフォンは本当に聞いていないのか。それとも、聞いていることを“聞いていない”と言っているだけなのか。

 少なくとも、この精度を前にして、疑わずにいられる人のほうが少数派になりつつあるのではないだろうか。

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文=渡邊存瀰

4代目TOCANA編集長
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