マストが立ったまま137年! 五大湖の底で発見された「幽霊船」ミルウォーキー号の奇跡的すぎる保存状態

深い霧に包まれた夜の海で、突如として船が交差する――。まるでホラー映画やミステリー小説のワンシーンのような事故で沈没した一隻の蒸気船が、137年という途方もない時間を経て、当時のままの姿で海底(正確には湖底)から発見された。
アメリカの五大湖の一つ、ミシガン湖の冷たく暗い水底で眠り続けていたのは、1886年に沈没した貨客船「ミルウォーキー号」だ。日本の感覚だと「湖で沈没船?」と思うかもしれないが、アメリカの五大湖は海のように広大で、天候も荒れやすく、数え切れないほどの沈没船が眠る“船の墓場”でもある。
1世紀以上の時を超えて引き揚げられた「完璧な幽霊船」の全貌と、沈没の夜に起きた奇妙な偶然の連鎖に迫る。
ソナーが捉えた「海底に立つマスト」
ミシガン沈没船研究協会(MSRA)のチームは、過去の新聞記事や水流のデータを徹底的に分析し、わずか2日間のソナー探査でミルウォーキー号の沈没地点を特定した。
水深360フィート(約110メートル)の冷たい湖底へ遠隔操作無人探査機(ROV)を潜らせると、モニターには信じられない光景が映し出された。
「ROVが底に向かって降下していくと、なんと前方のマストがまだ立ったままの状態で見えたんです」と、ROVパイロットのジャック・ヴァン・ヒースト氏は驚きを隠さない。
1886年の7月の夜、他の船と衝突して沈んでいった「その時の向き(北東)」のまま、船体は湖底に真っ直ぐと鎮座していたのだ。137年も水底にあったとは思えないほどの保存状態の良さは、淡水で水温が低い五大湖ならではの奇跡と言えるだろう。

霧と「壊れた汽笛」が招いた運命の交差
そもそも、なぜこの船は沈んだのか。
1886年7月の穏やかな夜、シカゴで木材を降ろしたミルウォーキー号は、次の積荷を求めてミシガン州マスキーゴンへと向かっていた。一方、全く同じサイズの蒸気船「C.ヒコックス号」は、マスキーゴンからシカゴへと向かう真逆のルートを航行していた。
深夜0時頃、両船の船長は互いの光を視認していた。当時の航海ルールでは、このような場合は「減速し、右に舵を切り、汽笛を鳴らして合図する」のが鉄則だった。
しかし、視界が良好だったためか、両船長とも「減速」を怠った。
その直後、まるで何かに操られるかのように、突然「濃い霧」が両船を包み込んだ。パニックになったヒコックス号の船長は急いで舵を切ろうとしたが、不運にも汽笛のチェーンが壊れており、相手に合図を送ることができなかった。
一方のミルウォーキー号の船長は、何もせずに直進を続けた。
そして一瞬だけ霧が晴れた時、すでに手遅れだった。フルスピードで進むヒコックス号の船首が、ミルウォーキー号の側面に激突したのである。
幸いにも乗組員は全員救命ボートで脱出し、駆けつけた別の船がロープをかけて沈没を防ごうとしたが、2時間後、ミルウォーキー号は冷たい湖底へと引きずり込まれていった。この怠慢により、両船長は免許停止処分を受けている。

「利益優先」の改造が船の寿命を縮めた?
今回、ROVが撮影した鮮明な映像により、ミルウォーキー号の当時の姿が詳細に判明した。
元々は乗客用のキャビンも備えた立派な貨客船だったが、1873年の金融恐慌(ウォール街のパニック)の影響で持ち主が転々とし、最終的なオーナーである木材商によって「木材を限界まで積めるように」操舵室や後部キャビンが極端に小さく改造されていたことがわかったのだ。
この「利益優先の過剰な改造」が、もしかすると衝突時のダメージを致命的なものにしたのかもしれない。
バミューダ・トライアングルのような超常現象の仕業ではないにせよ、晴天の深夜に突然現れた「濃霧」と、「壊れた汽笛」。まるで海の魔物が二つの船を引き合わせたかのような、不気味な偶然の連鎖である。
137年間、マストを立てたまま湖底で誰かを待ち続けていたミルウォーキー号。その無言の船体は、人間の慢心が招く一瞬の破滅を、今も静かに語りかけている。
参考:Popular Mechanics、ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊マストが立ったまま137年! 五大湖の底で発見された「幽霊船」ミルウォーキー号の奇跡的すぎる保存状態のページです。幽霊船、沈没船、五大湖などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで