地震前の「動物の異常行動」が遂に解明? 地震を予知する“超高感度”生物もわかった?
■“大移動”の引き金は「セロトニン症候群」だった!?
これらの動物たちの映像を分析する一方で、研究チームは震源地の周囲で記録されたVLF(超低周波)電波データも解析し、動物たちの行動と関連づける試みを行なった。
当時のVLF電波のデータを調べていくうちに、地震の2週間前から空中のイオンと自由電子(free electrons)の増加が認められ電波に影響を及ぼしていたことから、現地上空のイオン圏に乱れが生じていたことが突き止められたのだ。イオン層に特に大きな乱れが生じていたのが地震の8日前の8月16日で、これは動物たちの2番目の“大移動日”と重なるのだ。
地球を覆う成層圏の上部にあるイオン層の乱れはそもそもどうして起るのか? それは地震の前に起る地殻変動で地表から大量に放出される陽イオン(positive ions)に起因すると考えられている。そして大気中に増えた陽イオンは人間を含め動物たちに多大なストレスを与えて異常な行動へと駆り立てるということだ。
その典型が「セロトニン症候群(serotonin syndrome)」と呼ばれるもので、陽イオンの影響で血中で増加したセロトニンにより、落ち着きを失う、興奮する、じっとしていられない、思考と行動が混乱するなどの症状が現れるということだ。そしてこの症状が、動物たちの“大移動”の説明になると研究チームは解釈している。また、起伏に富む国立公園内の標高900m付近に設置されていた動体検知カメラから動物たちの姿が消えたのは、動物たちが陽イオンの濃度が薄い低地へ移動したためであるということだ。地震前の動物たちの異常な行動は決して神秘的な“予知能力”ではなかったということが、今回の研究から導き出されるかたちとなった。
■短期地震予測に大きな希望
もちろん陽イオンによるセロトニン症候群は人間にも起りうるのだが、残念ながらやはり人間は感受性がかなり鈍っているのか、若干の体長の異変に気づいたとしてもそれが地震の前兆であるとは思えないだろう。そもそもほとんどの人間は社会生活を送っているため、急な“大移動”も極めて難しい。
その点、動物たちは異変に気づけば躊躇なく“大移動”することが確認されたことになる。「(ネズミなどの)げっ歯類は“超高感度”な生物なんです」と研究チームのグランド教授は「Daily Mail」の取材で言及している。そしてネズミの行動を地震予測の指標にするという昔からの知見は正しいことが証明されることにもなった。
研究はこの後、地震前に起きる動物たちの行動をより詳細に分析し、実際の短期地震予測に応用できる可能性を追求する段階に進むということだ。当たらないことで有名な(!?)地震学による地震予測だが、全く別の分野から地震を予測できる可能性が見えてきたのは社会にとって大きな希望になることは確かだ。
(文=仲田しんじ)
参考:「Daily Mail」ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊地震前の「動物の異常行動」が遂に解明? 地震を予知する“超高感度”生物もわかった?のページです。予知、ネズミ、仲田しんじ、セロトニン症候群、地震などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで