北欧神話最強の武器ミョルニルがデンマークで出土! 神話ヲタが徹底解説!
北ヨーロッパの一国デンマークにある、10世紀に「ヴァイキング」と呼ばれる集団が暮らしていた遺跡から、長らく研究者の間で議論の対象となっていたある出土品について、3年ほど前に最終的な結論となる決定的な証拠が発掘されましたが(英紙「Daily Mail」2014年7月1日付)、このことがヴァイキングとミョルニル(トールハンマー)を理解する上で、重要な意味を持つことは一般にはあまり知られていません。
この議論とは「ヴァイキングの遺跡から数多く見つかっている、彼らが信仰していた北欧神話の神、トールの武器ミョルニル(トールハンマー)に似たアクセサリーは、果たしてミョルニルの模倣品なのか否か」というものです。
画像は18世紀の写本に描かれているトールで、手に持っている金槌のようなものがミョルニルです。
そして、このデンマークの遺跡から発掘されたミョルニルのアクセサリーのひとつに、ヴァイキングが使っていた古代文字「ルーン文字」で「Hmar x is」、英語訳で「This is a Hammer(これはハンマーだ)」と彫られていたのです。
この発見によって「ヴァイキングの遺跡から出土する、ミョルニルのようなアクセサリーはハンマーを模したもの」、すなわち「彼らの信仰していた神トールの持っているハンマー、ミョルニルを模したもの」という結論に至り、議論に終止符が打たれました。
さて、こちらはデンマークのすぐ近く、スウェーデンのとある遺跡から出土した、「ミョルニルを模したアクセサリー」です。古代北欧の人々はお守りとしてこのアクセサリーを作っており、その習慣は現在まで伝わっています。
写真を見比べて頂ければ一目瞭然。ほぼ同じ形をしており場所も近いのだから、ヴァイキングのアクセサリーもミョルニルを模したもの、と考えるのが自然ではないか、と思われるでしょう。
ですが「長らく研究者の間で議論の対象となっていた」と先述した通り、歴史的な事情から、そう簡単に断定することができなかったのです。
■ヴァイキング――謎と誤解だらけの民族
一般的に「ヴァイキング」という単語から想起される人物像と言えば、画像のような角の付いたヘルメットが特徴的な、斧を振るって戦う凶悪かつ野蛮で粗暴な海賊団、というものでしょう。ですが、これは映像作品などによる、間違ったステレオタイプです。
実際の一般的なヴァイキングたちは、この絵の左側に描かれているような姿をしていました。鼻を守る突起の付いた金属製の兜を被り、鎖かたびらを着込み、槍や戦斧と共に大きな盾を持ち、指揮官らしき人物だけが上位兵士の証である剣を携えているという、むしろ西洋の騎士のイメージに近いものです。
ただし、このような金属の防具を装備できたのは上位のヴァイキングのみで、下級兵士は動物の皮で作った鎧や兜を身に付けていたそうです。
また「ヴァイキング=海賊、海の上の住人」というのも間違いです。彼らは確かに独特の船を操り、武力による略奪・侵略行為を行っていますが、元々のヴァイキングは諸外国との交易と商業を生業としていた集団です。ヴァイキングとその家族たちは陸上を拠点として暮らしており、農業も営んでいました。
さらに、交易と同時に諸外国の技術や情報の収集・交換も行っていたためでしょう、ヴァイキングの持っていた地理学や航海術などの知識、製鉄などの工業技術は、彼らが特に活躍した8~10世紀のヨーロッパ諸国を凌駕するものでした。
ヴァイキングの卓越した造船技術や航海技術、工業、軍事力を示す歴史的事実としては、8~10世紀という古い時代に、ヴァイキングらは北は北極海、南は地中海、東はカスピ海、西は遥か海の向こうにある北アメリカ大陸のニューファンドランド島にまで到達し、一部を植民地としています。
ただしこれらの情報は、ヴァイキングの襲撃を受けた諸国の記録、遺跡の発掘調査、ヴァイキングの残した数少ない石碑や文献、叙事詩、口伝などから、研究者たちが導き出したものなのです。
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊北欧神話最強の武器ミョルニルがデンマークで出土! 神話ヲタが徹底解説!のページです。デンマーク、ヴァイキング、たけしな竜美、トールハンマー、ミョルニル、北欧神話、武器紹介シリーズなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで