やはり「未来が過去に影響する」ことが量子論で判明! 謎の「逆因果」研究とは!?
■「時間が未来だけに向かっているという証明はできない」
逆因果を研究するにあたってライファー氏とピュージー氏がそのよりどころとしているのが、ベルの不等式(Bell’s Theorem)である。
ベルの不等式は、1964年にアイルランドの物理学者、ジョン・ベル博士が提唱した数式で、ざっくりと言ってしまえば何か不可解な現象について、それが一般的な物理法則の中での例外的な出来事なのか、それとも量子論を持ち出さないと説明できない現象なのかを見分けるための数式である。つまりこの数式に収まる範囲内であれば一般的な物理学で説明できる現象であり、この数式を超える結果になってしまう現象は量子論に属するものになるというわけだ。具体的にはその現象が“量子的重ね合わせ”の状態であったのかどうか、“光速を超える速度”を伴っているのかどうかなどを見極めることである。
ライファー氏とピュージー氏はこのベルの不等式を空間から時間に置き換えて適用させた結果、時間が未来だけに向かって流れているという証明はできないと結論づけたのだ。つまり、逆因果の現象が存在する可能性があるということと、量子もつれの状態にある2つの量子は時間を遡るかたちでも影響を及ぼしあっているということである。ということはまさに一心同体の2つの量子は未来であれ過去であれ時空を超えて結びついていることになる。
「逆因果の研究が価値のあるものだと考えている理由は、一般的な物理学で量子論の解釈を試みるという、ベルの不等式を含む多くのノーゴー定理(no-go theorem)にあります。これらはつまり標準理論的な解釈ではつじつまが合わないという特徴を持っています。したがって、唯一の選択肢は一般的な物理学を放棄するか、標準理論のフレームワークから脱却することだと思われるのです」(マシュー・ライファー氏)
しかしながら逆因果はまだ多くの科学者が完全には受け入れてはおらず、この2人にしたところで逆因果が正しいのかどうかは今後の自分たち次第であることを認めている。
「私の知る限り、物理原則全体をカバーし、なおかつこの逆因果を取り入れた量子論的解釈はありません。逆因果は現時点では説明のためのアイディアなので、他の物理学者が懐疑的であるのは当然であり、ゆえに我々には逆因果を具体的な理論にする責任があります」(マシュー・ライファー氏)
ともあれ、今起きている現象の原因が過去にあるのではなく未来に導かれたものであると考えてみるのは、思考のパラダイムシフトをもたらすものになるだろう。ひょっとするとあまり理由がわからずにしてしまう行為は未来の自分の“おぼしめし”なのかもしれない!?
参考:「Express」、ほか
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