読むと「死ぬ本」が存在していた ― 恐るべき有害性と“美しすぎる表紙”に込められた謎とは!?=デンマーク
「読むと死ぬ本」――それは決してショッキングな本の比喩的呼称などではない。文字通り、読んだだけであなたの心臓が物理的に止まってしまうかもしれない恐ろしい本が現実に存在するのだ。デンマークの大学図書館に収蔵されている恐怖の古書3冊について、科学メディア「Science Alert」が報じた。
■有毒な本の秘密
先日、南デンマーク大学の図書館が保管する16~17世紀の極めて貴重な書籍3冊について、ある興味深い発見がなされた。なんと、その表紙に非常に高濃度のヒ素が含まれており、取り扱いに気をつけなければ健康を害する恐れがあるという。そう、これがまさに「読むと死ぬ本」である。
では、なぜ古書の表紙にヒ素が使われていたのか? 実は今回の発見、別の研究の過程で明らかになった偶然の賜物であった。
16~17世紀ヨーロッパの製本業者は、古い羊皮紙を再利用しており、これらの本の表紙もリサイクル羊皮紙であった。研究者らは、表紙の羊皮紙にかつて何が書かれていたかを分析するためX線による分析を行っていた。どうやらそこには手書きでローマ法などについて書かれていたようだった。だが、表面全体に塗られていた緑色の塗料が解読を妨げた。その塗料の成分を調べたところ、高濃度のヒ素が含まれていることが判明したのである。
■恐ろしくも美しい緑色
ヒ素は強い毒性を持つ物質の一つで、中世から暗殺用の毒や殺鼠剤として知られていた。その一方、ヒ素を含む顔料が19世紀のヨーロッパで鮮やかさと退色のしにくさから人気を集めるようになった。ヒ素は経口摂取のみならず、皮膚接触や気体の吸入でも重篤な中毒症状を起こす。ヒ素を含んだ緑色の顔料は「パリ・グリーン」や「エメラルド・グリーン」の名で人気を博していたが、色鮮やかな美しい壁紙やドレスが、ひっそりと多くの人々の命を奪っていったのである。
デンマークの古書に使われていた塗料は、装飾目的ではなく害虫から本を守るために使われていたとみられる。大学図書館では同書を1冊ずつダンボールに入れ、換気の行き届いたキャビネットで警告を表示した上で保存しているという。中身の閲覧をしやすいよう、デジタル化も計画しているそうだ。
読むと死ぬ本、その表紙に図らずも仕込まれていた毒は、恐ろしくも美しい緑色であった。
参考:「Science Alert」、「The Conversation」、「HYPERALLERGIC」、ほか
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