”人類滅亡恐怖症”の東大教授が選ぶ「最高の滅亡映画」5選! 隕石・核兵器…狂気の哲学者バートランド・ラッセルが水爆を愛した理由も!

人類滅亡恐怖症の東大教授が選ぶ「最高の滅亡映画」5選! 隕石・核兵器…狂気の哲学者バートランド・ラッセルが水爆を愛した理由も!の画像4
『博士の異常な愛情』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)

『博士の異常な愛情』のサブタイトルは「または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」でしたね。私つい先月、『バートランド・ラッセル 反核の論理学者』(学芸みらい社)という本を出版しましたが、サブタイトルとして「私は如何にして水爆を愛するのをやめたか」と付けました。反核平和運動の権化ラッセルが、一時期、なんと核兵器を愛したのです。アメリカだけが原爆を保有していた時期、ラッセルは「原爆で先制攻撃してでもソ連を屈服させよ」と主張しました。ソ連が原爆を開発すると「アメリカは水爆でソ連を屈服させよ」と主張したのです。

 怖いですね。しかしこの主張の動機は、全面核戦争への恐怖でした。アメリカが力ずくで世界政府を樹立して、一切の戦争を防止してしまえ、と。当時はこの考え、意外とウケがよく、ラッセルの国際的名声が頂点を極め、ノーベル賞を受賞(1950年)したのはまさにその頃なのでした。

 ソ連が水爆を開発すると、ラッセルは一転して核兵器廃絶を叫びました。世界各地の反核反戦デモを指導し、名声は地に落ちました(89歳で禁固刑を食らっています)。

人類滅亡恐怖症の東大教授が選ぶ「最高の滅亡映画」5選! 隕石・核兵器…狂気の哲学者バートランド・ラッセルが水爆を愛した理由も!の画像5
『バートランド・ラッセル 反核の論理学者:私は如何にして水爆を愛するのをやめたか 』(三浦俊彦著、学芸みらい社)

 この狂乱の起伏が何とも味わい深いのですが、「俺はどうしてラッセルがこんなにも好きなのか?」と自問自答するに、答えはやはり、「老哲人を苦しめた〈人類滅亡の恐怖〉への感情移入」……。人類滅亡フォビアのあまり、あるときは水爆を愛し、別のときは水爆を呪ったラッセルは、キューブリックが描くストレンジラブ博士をはるかに上回るレベルの、私にはたまらなく魅力的なマッド数理論理学者なのです。 

 さて、『博士の異常な愛情』とほぼ同時期に公開され、原作の盗作問題で訴訟にもなった『未知への飛行』(1964年)というアメリカ映画があります。この2作品、核戦争に至る流れが酷似しており、米ソ間の電話で政治家・将軍がやり取りする展開もいっしょなのですが、雰囲気は正反対。『未知への飛行』は可能な限りシリアスに作られた映画です。

 描写はシリアスなのに、大統領の決断が冗談レベルにすさまじい。その決断内容たるや、いちおう全面核戦争回避の策なのですが、ラッセルの対ソ予防戦争案も真っ青の狂気度です。『博士の異常な愛情』のドゥームズデイ・マシーンをもはるかに上回る恐怖度です。

人気連載

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.11.14 23:00心霊
彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.30 23:00心霊
深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.16 20:00心霊
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

”人類滅亡恐怖症”の東大教授が選ぶ「最高の滅亡映画」5選! 隕石・核兵器…狂気の哲学者バートランド・ラッセルが水爆を愛した理由も!のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング更新