北九州「呪いの村」で起きた本当にあった怖い話! 呪われた家、消える家族、殺人、そして死…「血蟲の村」川奈まり子の実話怪談!
その夜も、夕食後に家族会議が開かれた。
8月半ばの熱帯夜だった。4人は1階の居間に集まり、ああでもない、こうでもないと議論していた。
居間には大きな掃き出し窓があり、このときは雨戸を閉めておらず、カーテンが開いていた。田舎であるせいか庭から訪ねてくる人が多く、また、人目を気にする必要もなかったので、ここのカーテンはもっと夜遅くなるまで開けておくのが習慣になっていたのだ。
話し合いは9時過ぎまで続いた。その後、お開きになって、各自、入浴したり、自室に引き揚げたりした。
翌日の午前10時頃、さっきからパトカーのサイレンが盛んに聞こえると思っていたところ、突然、刑事2人を伴って駐在所の警察官が家を訪ねてきた。
昨夜、この家の真ん前で事件があったので、家族全員から事情聴取したいと言われ、とりあえず、刑事たちを居間に通した。
美津子さんと姉も、居間に呼ばれた。
「昨夜8時から9時の間、皆さんはどちらにいらっしゃいましたか?」
そう質問され、父が代表して答えた。
「全員、この部屋におりましたが……」
すると「この部屋ですか?」と刑事は父に訊ねて、居間の窓から外を眺めた。
そのとき、庭越しに、前の道路に青い作業服を着た人々が何人もいるのが見えた。警察官も複数集まっている。
「ええ。この部屋に夕食後……たぶん7時半ぐらいから、9時10分か15分くらいまで集まって家族会議をしていました。その後も私はここで深夜までテレビを見ていました。……いったい何があったんです? そこで作業しているのは鑑識の人たちですか? 事件ですか? 事故ですか?」
刑事たちはその場では父の質問に答えず、その後、ひとりひとり個別に事情聴取を受けさせられた。
美津子さんは、昨夜、何か不審な物音を見たり聞いたりしなかったかと質問されたが、何も見なかったし聞かなかったと答えるしかなかった。
「いつもの習慣で、夜になっても居間のカーテンを開けっぱなしにしていたんですよ。でも、変わったものは何も見ませんでした」
「誰か訪ねてきませんでしたか?」
「いいえ。誰も」
「家の前に、自動車が停められていたことに気がつきませんでしたか?」
「……誰かうちの前まで車で来たんですか? 車が近くに来たら、音でわかりますよね。でも全然、エンジンの音なんかしませんでしたよ?」
「そんなはずがないんです。よく思い出してください。昨夜ですよ?」
「ええ。9時過ぎまで姉や両親と居間にいました」
「そのとき、居間の電気は点けていましたか?」
「えっ? 夜だから点けてましたよ! どうしてそんなことを訊くんですか?」
「明るくしていたなら、外から見たら、部屋の中までよく見えたでしょうね?」
「……だと思います。でも、そこの道路は、夜になると人なんか滅多に通らないし、来るとしたら近所の人だから、うちでは誰も外から居間のようすが見えるかどうかなんて気にしてません」
美津子さんは、わけがわからなかった。
刑事たちは、美津子さんと姉に今日は外出するなと命じて、両親を警察署に連れていってしまったので、不安な気持ちのまま、何時間も過ごさなければならなかった。
何が起きたのか明らかになったのは、結局、その日の夕方になってからだった。
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