実在した『ベルばら』のオスカル的な英雄を亜留間次郎が解説! アメリカ独立戦争の雄、カジミール・プラスキ将軍は男装の麗人だった!?

■ゼクセンにいたフランチシュカの正体は〇〇〇?

 さて、もしフランチシュカがプラスキ将軍だった場合、二十数年間もザクセン王国のドレスデンに住んでいたのは誰なのかという問題が残ります。

フランチシュカ。画像は「Wikipedia」より引用

 クールラント公国の生き残りも含めて、ポーランドからの亡命者は現在のドイツのザクセン州のドレスデンに移住しており、カールとフランチシュカは1796年にドレスデンで没したことになっているのです。

 フランチシュカが公式な歴史に最後に登場したのは、1776年の貴賤結婚の承認が最後です。そして、貴賤結婚が承認される直前、正式にポーランドでのクールラント公爵カールの継承権の消滅が宣言されています。

 プラスキ将軍の所在がアメリカで最初に確認されたのが1777年です。当時は毎週のようにフランスから新大陸行の船が出ていましたから、半年もあれば十分に移動できたはずです。

 前述したように、ザクセン王国ドレスデンで夫婦で暮らしていたフランチシュカは、1776年の結婚を最後に、1796年4月30日の死亡記録まで歴史に登場しません。

 逆に、プラスキ将軍は1771年8月にポーランドで敗戦して軍事的行動が取れなくなり、1771年12月に欠席裁判で死刑宣告されたまま、1777年にアメリカで所在が確認されるまで行方不明になっています。

 フランチシュカがプラスキ将軍に戻ったのは、夫の継承権消滅の直後と考えられます。新大陸で領土を手に入れることができれば、ザクセンに残ったカールがザクセン王家や神聖ローマ帝国皇帝に政治的に働きかけ、アメリカ大陸のクールラント公国を欧州諸国に国家承認させる手はずだった可能性もあるでしょう。クールラント公国が承認されれば、ザクセンのドレスデンにいたポーランド亡命貴族の一団を率いて、アメリカに渡って政府組織を作る考えまであったのかもしれません。

 クールラント公国建国後、プラスキ将軍からフランチシュカ公爵夫人に戻ってもらうためには、妻は家にいることにしておかないと不都合です。まさか妻が男装して領土をぶんどってくるなど誰にも言えません。

 記録によるとカールは、1796年6月16日、フランチシュカの死から一か月半後に亡くなっています。63歳の誕生日が近くなり、カールが自分の寿命が尽きつつあるのを悟るまで、フランチシュカは“エア嫁”として存在していたとすれば矛盾しません。もしかしたら、カールはプラスキ将軍(フランチシュカ)の死を知ることができなくて、妻の帰還をずっと待っていたのかもしれません。

 ついでに言えば、フランチシュカにはカールとは別に、貴賤結婚の公認により公爵夫人としての年金の受給権がありました。王家からの年金頼りだったカールが、その収入目当てに妻を生きていることにし続けた可能性も考えられます。

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