実在した『ベルばら』のオスカル的な英雄を亜留間次郎が解説! アメリカ独立戦争の雄、カジミール・プラスキ将軍は男装の麗人だった!?

■そして伝統へ

 プラスキ将軍がアメリカに伝えたポーランド騎兵の伝統は、西部劇でおなじみの騎兵隊となりました。アメリカで騎兵隊と言えば、突撃ラッパの音と共にピンチに駆けつけてくれる西部劇の定番ヒーローです。

 そして、第二次世界大戦でポーランドの騎兵がナチスドイツに蹂躙され壊滅したころ、アメリカ騎兵は最後の意地をみせます。

 1942年1月16日、進撃してくる日本軍相手に馬にまたがり、サーベルを手にプラスキ将軍の旗を掲げ、騎兵ラッパを鳴らしながら最後の騎兵突撃を行いました。日本兵は馬に踏みつぶされ、サーベルで切り刻まれ、進撃は遅滞して、マッカーサー元帥は日本軍の魔の手から逃げ延びました。

 マッカーサー元帥の名言「わたしは戻ってくる(I shall return)」は、この時にアメリカ最後の騎兵隊長エドウィン・ラムジー中佐にかけられた別れの言葉なのです。

ダグラス・マッカーサー。画像は「Wikipedia」より引用

 ラムジー中佐はマッカーサー元帥の言葉を信じてゲリラとなり、フィリピンで日本軍と戦い続けました。最後は食べる物もなく自分の馬を食べ、武器弾薬も尽きてサーベル一本しかなく、病気で瀕死でした。それでも最後まで戦い抜き、マッカーサー元帥が戻ってきたときには痩せ細った体で出迎えたのです。

 マッカーサー元帥はラムジー中佐に、「わたしは帰ってきた(I have returned)」と言いました。その一言を聞いたラムジー中佐は病気と過労で倒れ、入院して一年に及ぶ闘病生活の末に健康を取り戻しました。

 まるでプラスキ将軍とクールラント公爵カールの再会を後の世で再現したかのような出来事でした。

 軍人が馬に乗らなくなった現在も、伝統としてアメリカ軍には騎兵隊が存続しています。アメリカ人にとって騎兵はヒーローであり心の父なのです。

参考:「Mysteries Surrounding Casimir Pulaski」「Wikipedia」ほか

文=亜留間次郎

薬理凶室の怪人アルマジロ男。人間の皮を被った血統書付きアルマジロ。守備範囲は医学から工学、ノーマルからアブノーマルまで幅広く、アリエナイ理科ノ大事典など、くられ氏と共に薬理凶室関連の共著多数。単著に『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』(三才ブックス)がある。よくわからないケダモノなのでよくわからないネタで攻めていきます。

公式サイト http://asai-laboratory.sakura.ne.jp/
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