魔術結社「黄金の夜明け団」の原点、ドイツの知られざる秘密組織「LLL」とは!? 謎に満ちた暗号文書の真実に迫る!
まずは暗号文書について見ていこう。
この文書は本来、イギリスのオカルティスト、ケネス・マッケンジーが保有していたものとされ、マッケンジーの死後その友人フレッド・ホックリーが保管していたという。そのホックリーが1885年に死亡したとき、その所有文書の一部がウェストコットの友人アレキサンダー・ウッドフォードの手に渡り、1887年にウェストコットからウッドフォードに託されたのだ。
つまり暗号文書それ自体については来歴がかなりはっきりしており、実在したことはまちがいないようだ。
次に、ドイツの魔術結社についてはどうか。
実は、ゴールデン・ドーンはテンプルと呼ぶいくつかの団員集団から構成されているのだが、最初に設立されたテンプル、イシス・ウラニア・テンプルは、第三テンプルという位置づけであった。というのは、シュプレンゲルの属する団体が第一テンプルであり、ゴールデン・ドーンより以前にケネス・マッケンジーが同じようにドイツの結社の許可を得て魔術結社を設立していたという経緯があるからだ。
そしてウェストコットは、このドイツの魔術結社の名に言及したことがあるのだ。彼によればその名は「LLL」であり、この団体こそ第一テンプルにして、アンナ・シュプレンゲルが所属していたものだという。実際ウェストコットが暗号文書を入手した頃、ドイツに「LLL」という団体が存在したことが明らかになっている。
では、この「LLL」とは、いったいどういう組織だったのだろうか。
「LLL」とは、「Licht, Liebe, Leben」つまりドイツ語で「光、生命、愛」の略であり、19世紀末に実際に活動していたことが確認されている。設立したのはドイツの神秘主義者ヨハン・ロイトベッヒャーであった。
ロイトベッヒャーは1801年に生まれ、生涯プライベートの哲学教師として過ごした。1838年、彼はエルランゲンにあるフリーメイソンのロッジに入会している。
1857年になると、フリーメイソンは古代エジプトやユダヤ教の神秘思想を受け継ぐ団体であるという内容の『エッセネ派、神学者とフリーメイソンの素描』なる著書も著している。
そして1864年に「LLL」を設立するのだが、これは彼が求めた古代の秘教、古代エジプトやキリスト教以前の異端宗教、ユダヤ・キリスト教神秘思想を包含した団体であったという。そしてゴールデン・ドーンもまた、「LLL」に習ったのか、カバラなどのユダヤ神秘思想、古代エジプトの秘儀などを取り入れている。さらにゴールデン・ドーンが採用したネオファイトからイプシシマスに至る11の位階も、ドイツの魔術結社、つまり「LLL」にならったものと言われている。
1875年、ロイトベッヒャーは死去したが、団員の一部はその後も活動を続けており、ウェストコットがこの団体と接触したことは十分ありうるだろう。
最後に、アンナ・シュプレンゲルについてはどうだろう。果たして彼女は、この団体に所属していたのだろうか。
残念ながら、アンナ・シュプレンゲルという女性が「LLL」に属していたかどうかは、未だに不明である。
ゴールデン・ドーンが内紛から分裂した後、自ら「ステラ・マテューティナ(暁の星)」という団体を率いたロバート・フェルキンなどは、ドイツを訪問中にルドルフ・シュタイナーと会見し、その弟子のひとりにアンナ・シュプレンゲルという女性がいることを発見しているが、ウェストコットによれば、アンナ・シュプレンゲルは1891年に死亡しているという。つまり、フェルキンが見つけた女性はウェストコットが接触した人物と同一とは思えないのだ。
なおシュタイナーについては、やはりドイツの魔術結社オルド・テンプリ・オリエンティスとの関係が指摘されているが、「LLL」との関係はやはり不明である。こうした点については、今後とも調査を続けていきたい。
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2024.10.02 20:00心霊魔術結社「黄金の夜明け団」の原点、ドイツの知られざる秘密組織「LLL」とは!? 謎に満ちた暗号文書の真実に迫る!のページです。魔術、ドイツ、フリーメイソン、イギリス、ルドルフ・シュタイナー、黄金の夜明け団、LLLなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで