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「決断する前に脳が活動開始している」と実験で判明！我々は“無意識の奴隷”なのか… 意思決定やサブリミナルの真実

2021.06.11 10:00 文＝仲田しんじ

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「決断する前に脳が活動開始している」と実験で判明！我々は無意識の奴隷なのか… 意思決定やサブリミナルの真実の画像3 — 「The Conversation」の記事より

■無意識のバイアス

　では、意思決定における無意識のバイアスについてはどうなのか。

　研究によると現在広く採用されている「潜在的連合テスト（IAT）」と呼ばれる手法を使用することで、人々は他の人に対して無意識で偏った態度 (人種や性の差別など) を抱くことが判明している。またこれらの態度が実際に雇用慣行における偏った決定や、受け取る側の人々の生活に影響を与える法律、医療、その他の重要な決定の動機となる可能性があることも示唆されている。

　ただしIATについては、同一人物に行った2回のテストの結果が一致しない傾向があるなど、意思決定行動の予測因子としては不十分であることも示されている。これは、当然テストの妥当性が低いことを意味するものだ。

■ナッジ理論

　2017年のノーベル経済学賞に輝いたナッジ理論は行動経済学の知見を駆使して人々の行動をよりよい方向へと誘導する技術であり、実際にスーパーマーケットや各種の公共施設などで活用されている。

「決断する前に脳が活動開始している」と実験で判明！我々は無意識の奴隷なのか… 意思決定やサブリミナルの真実の画像4 — イメージ画像：「Getty Images」

「意思決定を行う方法を改善するには、無意識に偏ったプロセスをより良い決定へと向け直す必要があります」と提唱者の1人であるハーバード大学のキャス・サンスティーン教授は語る。

　しかし最近の研究によると、ナッジ理論の実践はしばしば劇的に失敗することがわかっている。当人の望まぬ方向へと導き“ダマされた”という気分を抱かせた場合、それは逆効果になり、ナッジ理論を用いなかった場合よりも悪い結果につながるのである。

　とはいってもそこに悪意がない限り、ナッジ理論は有効に活用できるものである。それは“人心操作”でありながらも最終判断を下す“主体的な自分”が確保されているからだろう。

　いずれにせよ、こうして我々の無意識に訴えかける技術はいくつもあり、実際に日常生活の中である程度は無意識に影響を受けた結果としての意思決定を行っているのだろうが、英ロンドン大学クイーン・メアリー校の実験心理学者、マグダ・オスマン氏は、決して我々は“無意識の奴隷”ではないと「The Conversation」に寄稿した記事の中で解説している。

「より確実な科学的証拠は、私たちが無意識の思考よりも意識的な思考に支配されている可能性が高いことを示しています。私たちは、自分が何をしているのかを常に十分に認識しているわけではないと感じるかもしれません。これは、私たちが自分の内部の考えや動機に常に注意を払っているとは限らないためかもしれません。しかし、これは私たちの無意識がすべての決定を支配することと同等ではありません」（マグダ・オスマン氏）

　無意識が意思決定に強く影響を及ぼすケースもあるのだろうが、意思決定や選択にはさまざまな要素が影響を及ぼしており、無意識はその中の1つに過ぎないということだ。そして過去の意思決定の失敗を意識によって修正できると考えたほうが確かに人生は充実するだろう。無意識のせいにするばかりの人生は送りたくないものである。

参考：「The Conversation」、ほか