【日本怪事件】元カノの家の押し入れに潜んで殺害! 最悪のリベンジポルノ「三鷹ストーカー殺人」とは?

 ――日本で実際に起きたショッキングな事件、オカルト事件、B級事件、未解決事件など、前代未聞の【怪事件】をノンフィクションライターが紹介する…!

 

■三鷹ストーカー殺人事件

 2013年に起きた三鷹ストーカー殺人事件では、リベンジポルノによって被害者の姿が好奇の目に晒されることになった。

 池永チャールストーマスは、日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた。幼い頃に両親は離婚し、女手一つで育てられる。高校卒業後に海上自衛隊に入隊しようと応募し合格したが、健康診断で見つかった異常で不採用になった。

【日本怪事件】1分間の裸動画も公開…元カノの家の押し入れに潜んで殺害! 最悪のリベンジポルノ「三鷹ストーカー殺人」とは?の画像1池永チャールストーマス。画像は「YouTube」より引用

 一方、私立女子高校に通う佐野文香さん(仮名)は、映像関係の仕事をする父と現代美術画家の母の一人娘。小学生の頃からタレントとして活動し、スクリーンで女優デビューを果たしていた。

 池永はスーパーやコンビニでアルバイトをしていた2011年、文香さんと出会った。フェイスブック上で外国人にしつこく絡まれている彼女を、英語に堪能な池永が彼氏役を演じて撃退したのがきっかけだった。

 京都に住む池永は東京に出向き、吉祥寺で文香さんと会った。その日のうちに交際がスタートした。高校時代は柔道部に所属していた池永は、身長180センチで精悍な顔つき。フリーターである身分を隠して、立命館大学の学生だと騙ったが、彼女はそれを信じた。月に2度ほど会う遠距離恋愛が始まる。その時は2人とも10代であった。

 遠距離恋愛でなかなか会えないこともあり、池永はフェイスブックを見て彼女の浮気を疑った。だが、浮気をしていたのは池永の方だった。出会い系サイトで知り合った兵庫県の24歳の成美さん(仮名)と男女関係になったのだ。

 行為の最中、携帯電話で動画を撮られた気がした成美さんが池永のノートパソコンを確かめると、そこには女性の裸の画像を大量に保存したファイルがあった。池永が映り込んでいる画像もあった。成美さんが別れを告げると、池永からメールが送られてきた。そこに貼られたURLを開くと、以前に撮られた動画がアップされていた。リベンジポルノである。この時は、成美さんの友人男性の抗議もあり、池永は謝罪して動画を削除した。

Robinraj PremchandによるPixabayからの画像

 成美さんのことを文香さんは知るよしもなかったが、なにか不信を感じたのだろう。2012年秋、文香さんは海外留学をきっかけに池永に別れを告げた。2013年3月に文香さんが帰国すると、池永は復縁を強く求めた。文香さんの心は揺れたが、6月には決別を決意し、池永の携帯電話を着信拒否にした。だが彼は、後輩の携帯電話を借りるなどして彼女に連絡を取ろうとした。文香さんはそれを池永の新しい携帯番号だと思い、改めて着信拒否にした。

 

■ストーキング、リベンジポルノ、そして……

 9月27日、池永は夜行バスに乗って上京する。28日には凶行に使われることになる刃体約13センチのペティナイフを、吉祥寺の「ロフト」で購入している。文香さんの自宅周辺では池永と見られる男が何度も目撃され、10月1日と4日には文香さんの通学途上に姿を現した。

 10月2日、海外の投稿サイトに文香さんの画像がアップロードされた。スカートをたくし上げて下着を見せているもの、一糸まとわぬものなど、全部で67点。4日には、裸の文香さんが裸の男の下方で頭を動かしている1分間の動画がアップロードされた。いうまでもなく、池永によるリベンジポルノである。

 10月8日朝、文香さんは両親と一緒に、ストーカー被害を相談するために三鷹署を訪れた。その場で三鷹署員は池永に連絡しようとしたが、電話に出なかったため、「三鷹署まで連絡が欲しい」と留守録を残した。だがそれは、文香さんが池永の新しい携帯番号だと思い込んだ彼の後輩の電話番号だった。

 その日の午後、池永は文香さん宅に侵入する。隣家の室外機をつたって鍵のかかっていなかった2階の窓から侵入し、1階の文香さんの部屋のクローゼットに身を潜ませた。そこから京都の友人に向かってLINEを送っている。

〈ふんぎりつかんからかなりストーカーじみたことをしてる〉
〈元カノの家の押し入れにて〉
〈誰がいるか分からないんだ〉
〈普通にでようども鉢合わせしたら終わってしまう〉
〈詰んだ〉

 受け取った友人は訳が分からず、何かの冗談だと思った。

 帰ってきた文香さんが三鷹署員から帰宅確認の電話を受けたのが16時51分。2分後に通話が終わると、池永はクローゼットから飛び出し、制服姿の文香さんを手にしたペティナイフで襲った。道路まで逃げた文香さんにまたがり、首や背中など11カ所を刺して殺害した。

 現場から逃走した池永は、再び友人にLINEした。

〈被害者。無差別ではないです。恨みがありました。〉

 言い訳のような“犯行声明”とともにURLが貼り付けてあった。それは池永がリベンジポルノをアップロードしたサイトのアドレスだった。 

 路上で倒れている文香さんが発見され、110番通報された。ズボンに血痕をつけた池永は職務質問され、事件への関与を認めたため、18時30分に緊急逮捕された。

 この時、文香さんが18歳、池永が21歳だった。

 法廷で池永は、リベンジポルノを拡散した理由を「自分の存在証明」と開き直った。

 東京地裁立川支部の裁判員裁判判決は2014年8月、懲役22年(求刑・無期懲役)の判決を下したが、東京高裁判決は15年2月、「起訴されていないリベンジポルノ行為まで処罰し刑を重くした恐れがある」として1審判決を破棄、審理を差し戻した。

 検察は同年8月、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などで池永被告を追起訴したが、差し戻し後の1審判決は16年3月、差し戻し前と同じ懲役22年(求刑・懲役25年)となった。17年1月、東京高裁は一審判決を支持し被告、検察双方の控訴を棄却、どちらも上告しなかったため、懲役22年の刑が確定した。

 

※当記事は2018年の記事を再編集して掲載しています。

文=深笛義也

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)、『罠: 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった』(サイゾー)がある。ほか、著書はコチラ
Twitter:@giyagiyagiya

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