死後に散骨された世界の偉人・有名人! 墓に眠ることを拒んだ“本当の理由”とは?

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 散骨とは、故人の遺体を火葬した後の焼骨を粉末状にして海・空・山中などで撒く葬送方式だが、調べてみると内外の著名人で散骨を選んだ人々が非常に多いことがわかる。その実例と、理由について詳しく紹介する。

■散骨とは

 散骨には、火葬した遺灰を船の上から海に撒く海洋散骨の他にも、空・川・山中・公園・自宅の敷地内などでも行われる。古今東西、その理由は多種多様だが、ヒンドゥー教などではそもそも墓の習慣がなく散骨が一般的な葬送方式である他、共産主義国家において墓は「迷信の産物」であるとして散骨された指導者たちも多い。また、ナチスドイツの指導者層や、東京裁判で死刑となった東條英機らA級戦犯など、信奉者たちにより聖地化することを防止する事を目的とした散骨もある。

 また、以前の記事で紹介したが、筆者の妻の母国タイでも散骨が一般的で、国民の95%を占める仏教徒のほとんどは散骨され、基本的に墓地は無いのだが、遺骨の一部を寺院の通路の壁などに塗り固めることもある。2014年に妻の父が亡くなった際にも、火葬された後に近親者たちがチャーターした船に乗り、海上で散骨した。海から遠い土地に住んでいる場合は、川や山中に散骨することもあるようだ。

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■散骨された日本の著名人

 以下に、死後散骨された日本の著名人の例を紹介する。

・ 石原裕次郎(俳優・歌手)
 テレビドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)などの主演で知られる石原裕次郎氏(1934年12月28日生まれ)は、1987年7月17日に肺癌で死去した。兄の石原慎太郎氏が「海を愛していた弟は海に還してあげたい」と海洋散骨を計画したが、当時の法解釈では認められず断念。その後、1991年に「葬送の為の祭祀で、節度をもって行われる限り違法ではない」と法務省が発表し、遺灰の一部が湘南の海へ散骨された。

・ 中島らも(作家)
 小説家、劇作家、随筆家、放送作家などとして活躍した中島らも氏(1952年4月3日生まれ)は、酔って階段から落ちて脳挫傷となり、2004年7月26日に亡くなった。自身のエッセイ集『固いおとうふ』(双葉社)では、自分の死後は「身体の利用できる部位は他者のために役立ててほしい」「お墓はいらない。金がムダである」と書いた。その遺志を受け、遺骨の一部は宝塚市の自宅庭に散骨され、残りの遺骨は生地の尼崎市に近い大阪湾に散骨された。

・ 横山やすし(漫才師)
 西川きよしとの漫才コンビで知られた横山やすし氏(1944年3月18日生まれ)は、1996年1月21日、前日に大量にビールを飲んで自宅で寝たあとで意識を失い、アルコール性肝硬変で亡くなった。競艇などのギャンブル好きだった故人の遺志により、愛艇を置いた宮島競艇場で「散骨の儀」が行われ、船上から遺骨の一部が散骨された。

・ 梨元勝(芸能レポーター)
 芸能界の裏まで知り尽くした芸能リポーターのレジェンドと呼ばれた梨本勝氏(1944年12月1日生まれ)は、2010年8月21日に肺癌のため亡くなった。船を所有するほど海が好きで、本人の遺志により、2011年8月7日に妻と長女が故人愛用のクルーザーに乗り、東京湾で海に散骨した。

・ りりぃ(シンガー・ソングライター)
 ベース弾き語りというユニークなスタイルで、『私は泣いています』の大ヒットで知られるりりぃ氏(1952年2月17日生まれ)は、2016年11月11日に肺がんで亡くなった。親しかった『DREAMS COME TRUE』のボーカル・吉田美和に、「お墓はいらないから、火葬後は骨を鴨川の海に散骨してほしい」と伝えており、その遺志の通り、住んでいた千葉県鴨川市内の鴨川に散骨された。

・ 木内みどり(女優)
 劇団四季でデビューした女優の木内みどり氏(1950年9月25日生まれ)は、2019年11月18日に急性心臓死で亡くなった。生前、一般的な葬儀や戒名は自分には不要と語っていた本人の希望で通夜・告別式は行われず、家族葬で粉骨化された後、2020年9月に静岡県内の知人所有の山奥に散骨された。その場所は、本人が生前に散骨場所として下見をしており、それほど「終活」に力を入れていたようだ。散骨の様子はNHK広島の番組でドキュメンタリーとして放送された。

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■海外の著名人

・ アルベルト・アインシュタイン(理論物理学者)
 相対性理論でノーベル物理学賞を受賞したアインシュタイン氏(1879年3月14日、ドイツ生まれ)は、 腹部動脈瘤の肥大により1955年4月18日に移住先の米国で亡くなった。ユダヤ教徒の両親から生まれたが、生前に宗教は「子供じみた迷信」と語っており、遺灰はプリンストン高等研究所の敷地内に散骨されたといわれる。

・ クライド・トンボー(天文学者)
 冥王星の発見者として有名な米国のトンボー氏(1906年2月4日生まれ)は、1997年1月17日に肺塞栓症で亡くなった。遺灰の一部は冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」に搭載され、地球から最も遠くに葬られた人物となった。

・ ヴィヴィアン・リー(女優)
 マーガレット・ミッチェル原作の歴史小説の映画化である『風と共に去りぬ』で知られる英国の女優リー氏(1913年11月5日生まれ)は、長く双極性障害(躁病と抑うつの両方がある精神障害)と慢性結核に悩まされ、1967年7月8日に肺塞栓症で亡くなった。生前から散骨を希望し、別荘があった英国ウエストサセックスの湖に散骨された。

・ ジョージ・ハリスン(ミュージシャン)
 ビートルズのギタリストだったジョージ・ハリスン氏(1943年2月25日、英国生まれ)は、インド音楽との出会いをきっかけにインドの霊性やヒンドゥー教に傾倒したが、晩年は肺癌と脳腫瘍を併発し、2001年11月29日に亡くなった。生前、自分の遺灰はインドのガンジス河に散骨してほしいと家族に伝えており、その通りにされた。

・ ジョン・レノン(ミュージシャン)
 もう一人のビートルズのメンバー、ボーカル兼ギタリストだったレノン氏(1940年10月9日、英国生まれ)は、1980年12月8日に米国ニューヨークの自宅前で妻ヨーコ・オノ氏と一緒にいた時に暴漢に拳銃で撃たれ、亡くなった。葬式は行わず、ヨーコ氏が世界中に10分間の黙祷をお願いしたが、その後の遺灰の行方は公表されておらず、一説ではニューヨークのセントラルパークに散骨されたといわれる。

・ フレディ・マーキュリー(ミュージシャン)
 英国のロックバンド、クイーンのボーカルだったフレディ・マーキュリー氏(1946年9月5日生まれ)は、パールシーと呼ばれるインド人の熱心なゾロアスター教徒の両親のもとにザンジバル島(現タンザニア)で生まれた。1986年にHIV検査で感染がわかったがメンバーにも秘密にされ、5年たった1991年11月24日にケンジントンの自宅で亡くなる直前にエイズ感染を公表した。葬儀の後、本人の遺志によりゾロアスター教の習わしで火葬され、遺灰は恋人だったメアリー・オースティン氏が場所を明かさずに散骨したといわれるが、それは一部だったようで、数年前に西ロンドンの墓地で墓が見つかっている。

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■様々な意図と形態による散骨

 こうして見ていくと、著名人では墓は要らないと言って散骨を希望する人が多く、また海や船が好きだったというパターンも見られる。

 ところで、2021年に亡くなったジャーナリスト・評論家の立花隆氏は、生前に自著『知の旅は終わらない』(文芸春秋)で「死んだ後については、葬式にも墓にもまったく関心がありません」と書いていたが、「海に遺灰を撒(ま)く散骨もありますが、僕は泳げないから海より陸のほうがいい」と記し、妥協点として樹木葬あたりが良いと書いていた。

 実は筆者も妻の国であるタイの慣習に倣い、死後に海洋散骨を希望している。それでも、かつては伝統的に先祖崇拝の要素が強い日本の環境で育ったが故、墓は誰にとっても必要不可欠だと思っていた。しかし今回、実際には散骨を行った著名人が日本でも非常に多いことを知った。散骨は通常の墓地への埋葬に比べると費用が安く済むだろうが、このような著名人たちが経済的理由から散骨を希望したとは思えず、それぞれに死後の埋葬方法や場所にこだわりがあったようだ。今後、ますます葬送方式は多様化してくかもしれない。

参考:「日経新聞」、「平安堂通信」、「NEWSポストセブン」、「WIRED」、「毎日新聞」ほか

 

※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。

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文=百瀬直也

超常現象研究家、地震前兆研究家、ライター。25年のソフトウエア開発歴を生かしIT技術やデータ重視の調査研究が得意。
Webサイト:百幸.com
ブログ:『探求三昧』
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Twitter: @noya_momose

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