感動的“なりすまし”事例「祖母を悲しませないため」ニセの母親を13年雇い続けた孫

 今、中国では“レンタル彼女”を斡旋するビジネスが数年ぶりに流行をみせていると聞く。一人っ子政策のせいで男女比率が歪み(男性の方が多くなり)、彼女のできない男性が正月などで地方に帰る時、彼女のふりをしてくれる女性を雇うのだという。

 しかし今回のストーリーは、そのような短期の「レンタル彼女」ではなく、10年以上にわたる感動的「なりすましの娘」についてである。

■13年間も雇われた電話越しの“娘”

感動的“なりすまし”事例「祖母を悲しませないため」ニセの母親を13年雇い続けた孫の画像1
フユと娘のチェン・コンロン。母と娘はとても親密であったという「Daily Star」の記事より

「私のおばあちゃんは30歳で未亡人になり、一人でお母さんを育てました」と中国陝西省咸陽市に住むチェン・ジンさん(46歳)はチャイナ・デイリー紙に語る。そして祖母のフユさんと、その娘である(ジンさんの母)のコンロンさんは、本当に仲の良い母娘だったという。

 しかし、不幸なことに、ある日コンロンさんの肺に癌があることが判明した。コンロンさんはそのことを年老いて弱った母には知らせず、自分が死んだ後のことを考え、母親に向けた数十の音声メッセージを録音し始めた。

 コンロンさんは100歳近い母を思いやり、電話メッセージの内容も季節に合わせ、寒さについて話したり母に薬を飲むようにアドバイスしたりするなど、細かく気遣ったという。

 そしてコンロンさんは、娘のジンさんたちにそのメッセージを電話で再生して祖母のフユさんに聞かせるよう託し、69歳の時にこの世を去った。

感動的“なりすまし”事例「祖母を悲しませないため」ニセの母親を13年雇い続けた孫の画像2
「Daily Star」の記事より

 コンロンさんの死後、遺言通り家族は祖母のフユさんに電話メッセージを聞かせ続けた。しかし、電話メッセージの数にも限りがあり、ずっと同じメッセージを送る訳にもいかなくなり、家族はコンロンさんとやや声が似ているチェン・ウェイピンさんを“ニセの娘”として雇うことに決めた。

 ジンさんは初めてチェンさんが娘になりすまし、フユさんに電話した時のことをこう話す。

「初めの時、おばあちゃんはチェンさんにあなた誰? と尋ねました。チェンさんが娘だと言っても、おばあちゃんは信じなかったのです」(ジンさん)

 ジンさんは声が違って聞こえるのは風邪のせいだと説明し、やがてチェンさんと祖母フユさんは、家族のことを話し始め、やっと疑いは晴れたようだったという。

 その後、“ニセの娘”チェンさんはフユさんに定期的に電話をかけ続けた。電話だけで会いに来られない理由としては、心臓の手術などを言い訳にしたという。

感動的“なりすまし”事例「祖母を悲しませないため」ニセの母親を13年雇い続けた孫の画像3
フユさんの100歳の誕生日パーティーで。ジンさんは右から3番目 「Daily Star」の記事より

 やがて13年もの月日は流れ、フユさんは100歳の誕生日からわずか2カ月後に亡くなった。ジンさんはじめ家族は、フユさんが亡くなるまで“娘”の存在を維持できたのだった。フユさんは娘が死んだことを決して知らなかったという。

 日本では「なりすまし電話」によって、高齢者が騙されるオレオレ詐欺のような嫌な事件が相次いでいる。しかし、このような温かい「なりすまし電話」なら、騙されたフユさんもきっと許してくれるのではないだろうか。

参考:「Daily Star」、ほか

 

※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。

関連キーワード:, ,

文=三橋ココ

三橋ココの記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

感動的“なりすまし”事例「祖母を悲しませないため」ニセの母親を13年雇い続けた孫のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング更新